皆様こんにちは。JGA税理士法人/税理士の片瀬です。
以前「非居住者の銀行口座開設~日本銀行口座を開けない日本人(非居住者)が増加~」というコラムを執筆しました。こちらの記事はかなり人気記事となっているので、まだ読んだことない方は是非ご確認ください!
さて、本日は「非居住者が代表者の日本法人の銀行口座開設」についてです。
最近、非居住者の方から「日本法人」の銀行口座開設ができなくて困っているというお問い合わせを数多くいただきます。その多くが問題となってからのご連絡となってしまっていますが、なかなか問題が発生してからの対処では難しい現状がございます。
今日は、少し踏み込んでこの「非居住者が代表者の日本法人の銀行口座開設」を解説していこうと思いますので、ご自身の状況にあわせて、ご確認いただければ幸いです。
<非居住者ステータスでの個人口座のクローズ>
ネットインフラの発達により海外に住みながら日本でビジネスを行うことが容易になりました。海外で日本相手にビジネスを始めた多くの方が最初は、日本の居住者個人口座を利用してビジネスを行います。お客様は日本人になるので日本に口座がなければお金を受け取れず、皆さま深く考えずに(日本に居住しているときに開設した)個人銀行口座を利用しています。
ただし、ここに1つ目のリスクが潜んでいます。
海外居住しながら日本の居住者個人口座でビジネスを行うことは非常に危険です。非居住者ステータスでは、居住者口座のクローズを求められてしまうのです。多くの場合、入金確認の電話がかかってきた際や、日本に戻ってきたときの銀行訪問の際に発覚してしまっています。
この個人口座のクローズを求められてしまうと最悪です。一度、ご自身の日本の居住者ステータスを作り直さなければ、日本個人口座を永久に失ってしまうなど影響がかなり大きいのでご注意ください。
<日本法人の設立及び口座開設>
非居住者のステータスで日本の居住者口座を利用することはリスクが高いのは前述の通りなので、ビジネスが軌道に乗ってくると皆さま法人口座の開設に動くことになります。
その際に確認するのが、日本法人代表者の居住地の制限撤廃の規定(平成27年3月16日民商第29号通知)です。この制限の撤廃により、現在では日本法人の代表者の全員が非居住者であっても日本において法人を設立することは可能となっているのです。
ただし、ここに2つ目のリスクが潜んでいます。
法律と銀行のレギュレーションが異なるという問題です。異なるというと少し語弊があるのですが、、、上記の代表者の居住性の撤廃の規定があるので非居住者1人でも日本法人の設立はできます。ただし、法人の設立登記はできるけれども、お金を受け渡しする銀行口座が銀行のレギュレーション上で開けない。ここの罠に嵌ってしまう方が非常に多いのです。法律で非居住者であっても法人設立できるようになったと知れば、ひもづきで銀行口座も開設できると思ってしまいますよね。でも現実にそれはできません。
<ここで派生するリスク>
法人の設立はできたけど、銀行口座は開けない。でもビジネスは既に走ってしまっているので、入出金は必要となった場合に、皆さまはどのように対処しますか。
そうです。これが3つ目のリスク。個人居住者口座を利用するしかないのです。
この場合には、法人口座開設の申込時に非居住者であることを銀行側に伝えていますので、その非居住者という情報が銀行の個人口座担当に連携されると口座のクローズを求められることにもなりかねません。そうならないためにも細心の注意が必要です。法人口座開設できない、個人の居住者口座のクローズを求められた、こうなってしまっては目も当てられません。
<日本法人口座の開設方法>
2024年末時点の日本において、非居住者のみではメガバンクはもちろん、地銀や信金も新規法人口座開設は認めていないという状況が続いています。そのため、皆さまが日本法人口座を開設するために検討すべきことは次の通りです。
★日本居住者が新規法人口座開設に携わること
これにつきます。非居住者では銀行口座開設が認められないのであれば、法人の役員に日本居住者を置くしかありません。
(具体案)
①(代表取締役である)ご自身で日本居住者ステータスを取得する
②関係者を取締役登記して、当該関係者の日本居住者ステータスを利用する
③コンサルを取締役登記して、コンサル会社の日本居住者ステータスを利用する
ただし、既に非居住者で口座開設を断られてしまっている場合に、後付けでこれらの対応をしても認めてもらえない(既に非居住者でビジネスを行っていることを銀行側は知っているため)可能性が高いという実態もあります。
一度、口座開設NGをもらってしまうと状況的にはかなり不利に追い込まれます。そうならないためにも事前のスキーム検証が非常に重要なのです。
<その他重要項目>
①法人住所の検討 ※最近レンタルオフィス住所での口座開設が厳しくなってきている(レンタルオフィスでなくてもその場所で活動しているかの詳細を確認される事例が増えている)
②法人住所と銀行支店との距離的問題 ※遠方からの銀行口座開設は認められない傾向にある
③ビジネス内容の説明責任 ※取締役に据える方はしっかりとビジネスを理解することが必要となる
④資本金額の妥当性 ※1円の資本金でも法人設立できるが口座開設のための信頼性は得られない可能性が高い
今、日本の銀行口座開設は非常に難しくなってきています。しっかりとそのことを認識して、日本法人の設立・銀行口座開設に取り組んでもらえればと思います。
我々は「インバウンドサポート」を行っており、これらの状況も常にアップデートしています。海外と日本を含めた今後のライフプランをご検討の方は全体像をご確認ください。かなり難しい部分なので、何かございましたらお気軽にご連絡ください。引き続きよろしくお願いいたします。
【筆者紹介】
代表社員/税理士 片瀬 陽平
税理士業界が変遷する中、国際ビジネスのみが残された最後の領域であると考え、税理士法人時代から国際ビジネスに長く携わる。国際ビジネスには2種類(日本側・現地側が)あり、現地ビジネスに関しては、現地に駐在しなければクライアントにベストプラクティスの提案ができないと考え、2013年にメキシコに渡り、現地会計コンサルティングファームの立ち上げを行う。渡墨後は、日系企業のメキシコ進出サポート及び現地日系企業への経営コンサルティング(事業計画/年度予算作成、内部統制・不正調査、各種DD、連結パッケージ作成など)を主に行っていた。2016年にはアメリカに渡り、Bridge Note (Thailand)Co.,Ltd.(現BM Accounting Co.,Ltd)を立上げ、次いでインドネシアのPT. Bridge Note Indonesiaの移転価格事業部を組成した。また、2018年にアメリカ移転価格税制協力会の発起人としてアメリカ移転価格税制サービスレベルの底上げを行う。専門領域は、経営コンサルティング、インバウンド支援、国際税務コンサルティング、社内DX化など多岐にわたる