皆様こんにちは、JGA税理士法人/税理士の片瀬です。
今日はいつものコラムとは異なり、今後税理士業界へ飛び込んでみたいと考えている皆様へ、どのような税理士事務所が働きやすいかを記載します。すこし大げさに書いている部分もありますが、参考にしてもらえれば幸いです。
【働きやすい税理士事務所の特徴】
①成長している
②DX化している
③専門分野が明確
④税理士割合が高い
⑤残業がほとんどない
⑥多様な働き方を認めている
昨今、今後なくなる仕事として税理士が取り上げられることが増えています。それを受けてか税理士になろうという方も少なくなっています。この盛り上がっていない印象の税理士業界ですが、個人的にはチャンスが多く、稼げる業界と感じています。
税理士業界が縮小していることは間違いないですし、(従前業務の)単価が安くなっていることも間違いありません。それでも稼げている税理士事務所も多いのです。そう、税理士業界は今、二極化しています。
この部分について、簡単なポイントを抑えるだけで、(税理士業界に飛び込もうとしている)皆様の今後の職場環境が大きく変わります。この業界、ブラックな事務所は、とことんブラックなので注意が必要なんです・・・。
【採用活動で受けるべき事務所】
税理士業界への転職で抑えておかなければ、後悔する可能性が高いのは次の点です。まずはこれを確認してもらえればと思います。
「成長している事務所であること」
みるべきポイントはこれだけで十分です。ただし、これだけは絶対に確認する必要があると個人的に思っています。
成長している事務所であるということは、新しくクライアントから求められる事務所であるということです。注意しなければならないことは、既に大きな事務所を見つけることではなく、「成長中」の事務所を見つけることです。既に大きな事務所は現状維持も多いのです。
現状維持では、クライアントから明確に求められているとは言えず、客単価も安くなっていくことは明白です。そういう事務所は、中の人件費を削って利益を出すような経営判断をします。事務所の中での給与水準の二極化が起きています。古参の従業員は高い給与をもらい、新人には低い給与でと。古くからの従業員(特に税理士)の一度上げてしまっている給与を下げることはできません(辞めてしまうため)。
トップラインを伸ばすことができているかが重要で、利益を計上できているかは重要ではありません。利益率戦略はコスト削減戦略でもあるため、税理士業界の主コストである人件費が主に削られていくのです。
※経営判断としては利益率の維持/増加は非常に重要、反面、応募者からみると利益率の維持が重要ではないというものです。
創業期⇒拡大期⇒成熟期⇒衰退期(二次成長期)のサイクルで考えると成熟期に入っている税理士事務所が非常に多い、そこに罠が潜んでいるのです。日本人の特性として、成熟期の(大きな)企業に入りたいという方が非常に多いため、そのような方たちの多くは、理想と現実のギャップにやられてしまいます。
【成長している事務所の見抜き方】
ただ、面接時に「御社の3年分のPLを見させてください!」というわけにもいきません。所長先生に聞いても、正直に答えてもらえているか分かりません。そのため次の点を確認するのです。
「DX化している事務所であるか?」
「専門分野が明確であるか?」
「税理士割合が高い事務所であるか?」
「残業が殆どないか?」
「多様な働き方を認めているか?」
これが稼げている事務所の特徴です。特に「DX化している事務所」、「専門分野が明確な事務所」は、絶対に外せないポイントです。ここを面接で確認してみましょう。ここは正直に答えてもらえるので。
【税理士業務一巡を頭に入れること】
面接で確認したとしても、皆様が税理士業界につき未経験であれば、一般的な税理士業務と専門的な税理士業務の区別をつけることは難しいかもしれません。そのため一般的な税理士業務を頭に入れてから面接にあたってもらった方が精緻な見極めが可能となります。
記帳代行業務や申告書作成業務、月次(相談)顧問業務ですら今後システムやAIに代替されなくなります。一般的な税理士業務はなくなるのです(少なくともそう思って業務設計はするべきです)。
例えば、「DX化している事務所」があったとします。従前の記帳代行業務等がDX化によって、1/5くらいの工数になりました。残りの時間をクライアントのためにどう使っているか?それも確認ポイントかもしれません。
経営サイドの戦略としては、
①顧問料を維持し、DX化によって空いた時間にて、専門コンサルを提供する
②DX化によって工数がかからなくなった分、量を増やし(単価を下げ)、大量のクライアントを持つ
DX化の特徴は、この2つに分類されます。②ももちろん経営判断としてはありですが、税理士事務所というよりもシステム屋さんという印象が強いかもしれません。1年間くらいこのような事務所で会計税務系のシステムに強くなり、「専門性が高いけれど、DX化できていない税理士事務所」へ自分を売り込んでも、自分の価値は上げられるように思います。この部分は若い世代の方が圧倒的に強いため、年輩の税理士と余裕で勝負できます。
結局は、どのように自分の人生を設計するかですね。
【税理士になることの重要性】
この業界に飛び込むのであれば、どのような方法でも良いので税理士になることが重要です。可能であれば3年間くらい受験専念して全科目を取る方が良いです。税理士になることを諦める方は、受験を始めた方の80%以上だと思います(体感ですが、低めに言って80%)。
そして勉強中は、「=修行中」と、思っている税理士事務所の所長先生は非常に多いという現実があります。どうせ税理士受からずに辞めていくだろうとすら思っている方も少なからずいます。上記にて「利益率戦略はコスト削減戦略」と書きましたが、この部分は理由付けがとても簡単なのです。
「修行中のため、一人前に育てているため、給与は低い」と。
「税理士になって一人前になったら給与を上げてあげるから、頑張ってはやく税理士になって欲しい」と。
これを真剣に思い込み、これも経営戦略だと真面目に認識しています。そして従前の税理士業務に固執します。成長している事務所とは、経営の設計・戦略がまるで違うのです。
①(従前の税理士業務を任され)修行中のため、一人前に育てているため、給与は低い。利益率を維持するためには、事務所を存続させるためにはを考える
②事務所を拡大するためには、クライアントに喜んでもらうためには、従業員に還元するためにはと考える
みなさんは、どちらの事務所で働きたいですか?
いかがでしたでしょうか。文章として面白くするために比較して書いてみましたが、どちらが良い悪いというものではありません。ただ、自分としては「みなさん②の事務所で働きたいだろうな」という想いで、事務所経営を行っています。これも1つの側面でしかないため、皆様がたご自身がどのようにライフプランを考えるかが重要です。参考になれば嬉しく思います。
【筆者紹介】
代表社員/税理士 片瀬 陽平
税理士業界が変遷する中、国際ビジネスのみが残された最後の領域であると考え、税理士法人時代から国際ビジネスに長く携わる。国際ビジネスには2種類(日本側・現地側が)あり、現地ビジネスに関しては、現地に駐在しなければクライアントにベストプラクティスの提案ができないと考え、2013年にメキシコに渡り、現地会計コンサルティングファームの立ち上げを行う。渡墨後は、日系企業のメキシコ進出サポート及び現地日系企業への経営コンサルティング(事業計画/年度予算作成、内部統制・不正調査、各種DD、連結パッケージ作成など)を主に行っていた。2016年にはアメリカに渡り、Bridge Note (Thailand)Co.,Ltd.(現BM Accounting Co.,Ltd)を立上げ、次いでインドネシアのPT. Bridge Note Indonesiaの移転価格事業部を組成した。また、2018年にアメリカ移転価格税制協力会の発起人としてアメリカ移転価格税制サービスレベルの底上げを行う。専門領域は、経営コンサルティング、インバウンド支援、国際税務コンサルティング、社内DX化など多岐にわたる