海外ビジネスの作り方~プロフィットシェアという魔法の契約~

皆様こんにちは、JGA税理士法人/税理士の片瀬です。今日は私のメキシコ時代のビジネスについて少しお話できればと思います。私がメキシコにいた2012年頃は日系企業(自動車関連)がこぞってメキシコに進出し、1からビジネスを開始しており、我々のようなコンサル会社が行うワンストップサービス(進出からすべてを1つのコンサルが行う)が育つ土台がありました。私も例に漏れずメキシコでワンストップサービスを展開していました。

ワンストップサービスはFS作成から始まって、不動産紹介、銀行口座開設、会社設立、ビザ取得、システム導入、経理代行、人材紹介、親会社報告体制構築、年度申告といくつも業務がありますが、今日は、その中でも「人材紹介」についてお伝えします。

私がメキシコ時代に考えていた人材紹介ビジネスのスキーム組成についてです。是非海外ビジネスの参考にしていただければ幸いです。

●では、最初に、人材紹介ビジネスのコアコンピタンスは何だと思いますか?

これはあくまでも私の持論ですが、「紹介する人材の質」以外にはありません。ただ、これを担保することが実はめちゃくちゃ難しいのです。人材紹介会社が多くなってくると日系企業で働くローカル人材が固定される、いわゆる“ぐるぐる回り”が発生します。日系企業で働いていた人は実は採用してはいけない人材です(なぜなら他の日系企業を辞めた人間ですから、貴社も辞めます。日系企業の内情などどこも同じなので。)。

海外では(現地ローカルマネージャーからしたら)日系企業はめちゃくちゃ特殊な会社であり、実は日系企業で働いた人材は日系企業でもう二度と働きたくないと思うことが多いのです。そんな中、同じ日系企業で働く(転職する)マネージャークラスの目的は何でしょうか?彼らの面談に同席すると多くの応募者が「(前の会社では)自分の能力を発揮できなかった」というのです。やっぱり採用してはいけない人材です。

メキシコではマネージャークラスの給料は日系もローカルもそこまで大きな差がありません。大体600万円程度です(新卒の初任給を含め日本の×0.8程度)。確かに「自分の能力を発揮できなかった」人材は多くいます。ただ、その中の有能な人材はもっと給料の良い中国や韓国企業などの外資系企業に転職していきます。日系企業をスターター(外資系企業への転職の足掛かり/そのような人材は技術・ノウハウを抜いていきます)として使うこともしばしば。

私がメキシコに進出した当時でも、既に日系の人材紹介会社は一定数メキシコでビジネスを行っていました。そんな日系の人材紹介会社の人材リストを見てみると「過去に日系企業で働いた経験あり」と大々的に記載されているのです。大手人材紹介会社には正攻法では勝てませんし、日系企業で働いた経験は個人的にはバッドステータスと感じるので、私が行う人材紹介ビジネスにおいては、もちろん違うスキームを模索します。

まず、日系の進出の多い都市(アグアスカリエンテス、イラプアト、ケレタロなど)にて個人で独立している若いエージェントにコンタクトを取り、良い人材であれば「外注契約」ではなく「プロフィットシェアリング契約」を結びました(5人のエージェントとプロフィットシェア契約を結んでいました)。このプロフィットシェア契約がまさに「魔法の言葉」であり、私が人材紹介ビジネスで成功した大きな要因です(税務が専門なのに一番儲けたものが人材紹介だとは・・・笑)。

メキシコのローカル人材紹介会社の「一般的な成功報酬は10%程度」ですが、私は自社の人材紹介の成功報酬を「一般的な成功報酬(10%)の数倍」に設定し、具体的には「50%:50%」としました。つまりエージェントは私と組むだけで一般的な成功報酬の約5倍の金額(私からお客様への請求も一般的な価格より高く設定しているので、実際には5倍以上の金額)を手に入れることができます。もし、エージェントがローカルの人材紹介会社と組んでも「外注契約」で安く使われるだけであり、そこにインセンティブは何もありません。駆け出しの個人エージェントにとって全部を明るみにしてくれる「プロフィットシェア契約」はまさに魔法の言葉です。必然的にエージェントが持っている「弾」の最も優秀な人材を紹介してくれます。

●私はそこに色を付けていくのです。個人エージェントが持っている優秀な人材を、日本人/日系企業において優秀な人材へと昇華していきます。

●競合と同じことを行うと「後発組」では利益を出すことが限りなく難しいのが現状です。「先行者利得」が強すぎるのです。

応募者には面接への回答ではなく、企業分析(企業分析は私も手伝います)をし、面接時においてプレゼンをするように指導しました。パワーポイント等でプレゼン資料を作成させ、事前に日系企業に提出します(これは日本でもそうですが、履歴書や職務経歴書ってマネージャー採用では正直足りない・パワーがないし、皆が同じフォームで作成してくる時点で、そのような人材は個人的にはあまり優秀な人材ではないと思ってしまいます。日本ではある種イレギュラー認定されてしまう可能性がある行為も海外では評価されるのです。しかも評価するのは日本人だから面白いです)。採用する日系企業も面接で本格的なプレゼンされることなんて絶対にない(比較するのは大手人材紹介会社のリストの人材です。リストの人材の基本スタンスはいくつものリストに載り、声が掛かれば儲けものという待ちの姿勢です)ので、成約率を高く維持することができます。

●あとは私からお客様に「メキシコでこんな優秀な人は見たことない」というだけです。

●事実としてエージェントの持っている数千人の持ち弾(人材の母集団)の中で一番良い人材です。誰も不幸にならない良いスキームができました。

2023年現在において、日系企業の海外進出がかなり少なくなっています。そんな中でもブルーオーシャンを狙うならローカルと組まなければなりません。でも多くの日系企業がローカルと「外注契約」を結ぶのです。結ぶべきは「プロフィットシェア契約」なのにです。ポイントは、自分たちの利益を隠すのではなく、表に出すのです。これからの時代、信頼関係がより重要になります。信頼関係を構築し、お互いに最良の形を探すことが成功の近道であると感じています。

人間は本質的に「他人が儲ける」ことが嫌いです。「外注契約」の本質的な問題点は相手に「あいつは俺以上に設けているだろう」と思わせてしまうことです。たとえそんなに設けていなかったとしてもです。会社が支払う「給料」も同様です。会社が「自分の一生」を保証してくれるのであれば「外注契約」ではありませんが、終身雇用が破綻した今の日本の会社のほとんどは実質的に「外注契約」です。ここの「説明」が上手くできなければ、つまり相手の「心理・心情を上手くコントロール」できなければ、ローカル企業・ローカル社員とも、はたまた日本人社員とも付き合っていくことは難しいでしょう。時代に合わせるように給与設計、人事制度などはドラスティックに変えていかなければなりません(既存社員の抵抗勢力がいたとしても方法論はいくらでもあります)。

「ローカル社員は給料を見せ合うから、給料を同一水準にしなければならない」と日系企業の方々から良く聞きます。これも見せ合うならば給料に格差をつける方が実は上手くいきます。隠されると給料を上げるために何をすれば良いかの説得力を持たせることはとても難しいけれど、見せ合ってくれるのであれば「あいつの給料が高いのはこういう行動をしているから」と客観的な事実と共に説明可能になるからです。

※日本人の中には、「俺もこれだけしかもらっていないんだからお前も頑張れよ」などと言う方がいますが、あれは海外では本当に逆効果です。もし新卒なんかに言ってしまった場合には皆一瞬で辞めていきますね。絶対に言ってはいけないNGワードです。

これから先海外で生き残っていくためには「ローカルとの付き合い方」が非常に重要になります。一般的に海外や日本で常識と言われていることに、参考になることは実はあまり無いのかもしれません。ローカルと上手く付き合い、自社の利益の最大化のための参考にしていただければ幸いです。