人とのつながり~シェア拡大の方策~

皆さんこんにちは。JGA税理士法人/税理士の片瀬です。今日は会社を立ち上げ、新規ビジネスを行う上で欠かすことのできない人とのつながりについてお話しようかと思います。少し主観が多くなると思いますが、ご了承いただければ幸いです。

新規ビジネスを行う上で、まず検討しなければならないのがシェアの拡大です。どんなことをしても、どんな裏技を使ったとしてもシェアを拡大しなければ、その新規ビジネスに道はありません。シェアの拡大は一般的に「売上額の拡大」と言われています。もちろん間違ってはいませんが、これでは少し足りません。売上額の拡大は実は2つの要素から構成されています。

「認知」と「商品力」です。

「認知」は営業の範疇であり、「商品力」は技術の範疇です。新規ビジネスを行うということは「商品力」は担保されているはずです(絶対売れると思われていることと思います)ので、今回は、この「認知」についてお話しします。もちろん「認知」されているのに商品が売れないのは「商品力」に問題があるので、どこに問題があるのかをしっかりと認識しなければなりません(商品力に問題があるビジネスは「誰かと組め!」です。組まなきゃ終わります)。さて、この「認知」ですが、更に2つに分類することができると考えています。

「人の認知」と「商品の認知」です。

私自身、会計税務コンサルをメインで行っていたときは、「自分自身が商品」であり、すべて自己完結できたために「人の認知」と「商品の認知」を分けて考えることがあまりありませんでした。「人の認知」と「商品の認知」に関して、新規ビジネスであれば、まず「人の認知」から始めるべきです。なぜ「商品の認知」ではなく、「人の認知」からというと、設立間もない会社は「人がブランド」になるため(というよりもお金がなくて商品のブランディングができないため)、消去法で自分自身のブランディングをするしかないのです。※ただし、圧倒的な商品力があるのであれば人の認知は不要です。SNSでバズらせて下さい。

「人の認知」=「人とのつながり」ということで、今回のコラムのテーマを「人とのつながり」としています。

 

「人とのつながり」をつくる際に私が気を付けていることは、フェーズをしっかりと見極めるということです。まず、第1フェーズは「その人の存在を知らない」、第2フェーズが「その人の存在は知っているが、何をしているのか知らない」、第3フェーズ「その人の存在も何を行っているのかも知っている」、第4フェーズ「その人が自分に何を与えてくれる人かを知っている」という4段階に分けて「人とのつながり」を作っていくべきです。

第1フェーズ:認知させる

第2フェーズ:興味・関心を持たせる

第3フェーズ:比較・検討してもらう

第4フェーズ:購入してもらう

この第1フェーズ・第2フェーズができない人が多いので、このアッパーファネルに対する私の考えをと思ったのが今回のコラムを執筆する発端です。

よく自己啓発本とかで、“一流の人は交流会には参加しない”や“自分の価値を高めることが重要”、“まずは与える”などいろいろなことが書かれています。例えば「自分の価値を高める」ことはもちろん重要ですが、「その人の存在を知らない」という第1フェーズにおいて「自分の価値を高める」ことには実際なんの意味もありません。つまり、自己啓発本に書かれている情報はどれもとても大切なものですが、フェーズを見誤ってしまっては、その本来の力を発揮することができません。

4つのフェーズの内、新規ビジネスであればすべての社長は「その人の存在を知らない」というフェーズから始まります。ただし、存在を知られていないことは実はビジネスにおいて、もっとも恥ずべきことであり、例え「何この人???」と思われたとしても、自分の存在は常に人の目に付くところに置いておかなければならないと私は思っています。ただし、これが非常に難しく、存在の知られ方についても気を付けなければならないポイントがあります。

【ポイント】

ポジショニング戦略(人との関係を決定づける重要な要素。めっちゃ大事)

特に日本人の固定観念に染みついているのが、「先輩・後輩」の関係性(上下関係)であり、この固定観念が「存在を知られる」という一番大切なことを複雑にしているのです。例えばある会合に出席したとして、その会合の“主催者”と“初参加者”であれば皆さんはどちらの方と付き合うことを選びますか?

「もちろん主催者です!」

・・・まぁ「初参加者」は報われないですよね。

⇒Innovationでなければ(Improvementであれば)、ビジネスの世界についても同じです。

そこには明確なポジショニングが存在してしまっているために、ポジショニングが下の人からの提案は価値のないものという反射的なジャッジが下されてしまうのです。ただし、会合に参加して人と交流することは多くの場合「存在をしらない」⇒「その人の存在は知っているが、何をしているのか知らない」への変化が起きる可能性があるで、本来は参加すべきなのに・・・くそっ!!、という強烈な「ジレンマ」に襲われます。

皆さんの中にも、ある人と仲良くなり、その人が主催する会合に誘われ、参加したのはいいけれど、その会合中は自分に興味を示してくれなかった(会話すら振ってくれなかった)というような寂しい思いをされた方も多くいるかと思います。中には、もう二度と参加しないと思われている方もいるかもしれません。私自身いろいろなものに参加していますが、既に形があるコミュニティへの参加はどれも同じようなものと感じています(過去の貢献の大きさがそのコミュニティの中での現在の存在意義を作っているため、これはもうしょうがないです)。

ただし、上記のようにフェーズの変化(「存在をしらない」⇒「その人の存在は知っているが、何をしているのか知らない」)が起きる可能性がある行為なので、参加しないよりは参加した方が良いに決まっています。そう決まっているのですが、参加したところで自社の商品・サービスが売れるようになるわけでもなく、全く意味のない行為であるようにもどうしても思えてしまいます。

戦略は全体像の把握が非常に大切!!

このような会合も、闇雲に参加するのではなく、次のフェーズに移行する準備をしてから参加することが必要です。現在の第2フェーズは「その人の存在は知っているが、何をしているのか知らない」であり、次の第3フェーズは「その人の存在も何を行っているのかも知っている」です。では、どのように次のフェーズに移行させるべきなのでしょうか。

ここで必要なものが「紹介(口コミ)」です。自分の価値は人が高めてくれるものですので、例えポジショニングが下から入ったとしても誰かに引っ張り上げてもらえる仕組みさえできていれば良いのです。ポジショニングが下から入って引っ張り上げてもらった場合には、その振れ幅が「評価」または「興味」になります。

なので、もう一度・・・

上記の「皆さんの中にも、ある人と仲良くなり、その人が主催する会合に誘われ、参加した」という場合に、どのような参加の仕方が本来あるべきだったでしょうか?

正解は・・・

「どのような会合ですか?ふむふむ、、それならこのような話(サービスにつなげる話であればベスト)は参加者のためになると思いますので、少しお時間をもらってお話しさせていただくことは可能ですか?」です。

※実際は、もっと時間をかけて効果の最大化を狙います。無理と言われたら参加する必要はありません(その人の自己顕示欲に付き合う必要はありません)。

自分の価値を高めてくれる人の見つけ方は、自分の属する業界の情報がどこに集まっているか、ポテンシャルクライアントはどこに情報を取りにいっているか、これらを意識して情報がプールされている人を探すことがまず一つ、また、ポテンシャルクライアントが必ず会う人(ビジネス上、会わざるを得ない人)を探すことがもう一つ、つまり業界におけるプル・プッシュ営業のキーマンを探す取り組みが必要です(←ここは戦略的に。小売りだと難しいですが、、、その他業種については基本的にキーマン探しが重要です)。

そして、ここも重要なのですが、業界におけるプル・プッシュ営業のキーマンに代わりに売ってもらうのではなく(もちろん売ってもらえたらベストですが、これはハードルがめっちゃ高いので・・・)、自分自身の紹介をさせてもらう(紹介してもらってはいけません)、つまり余計な気苦労とリスクを紹介者にかけないような配慮(かつ紹介者にリターンが見込めること)が必要となります。そして商品のパンフレットだけではなく、ソリューション(その会合・業界などにおける問題提起と解決策)を用意して皆を納得させることが重要です。

コンサル業界では拡大しているコンサルの殆どが、人とのつながりにおいて、「問い合わせ」と「紹介」でクライアントを増やしています。

例えば、私は来週の月曜日(8/28)に上場会社が開催する社長ばかりを集めた勉強会に参加します(関西を元気にする会)。国際税務に関するテーマで30分くらい話をしてきます(8/30追記:皆さんの熱がすごく楽しく講演を行うことができました。質疑応答が盛り上がると楽しいですね!)。この勉強会は、実は会計事務所のアドバイザーとしてBIG4の一社、名古屋の大手独立系会計事務所が入っているのですが、既存のアドバイザー各社を飛び越えて参加してきます。初参加です。これがキーマンと懇意にしている力です(読んでいたらごめんなさい。キーマンとは思っていないです。説明の都合上仕方なかったのです笑)。

次に第3フェーズ「その人の存在も何を行っているのかも知っている」⇒第4フェーズ「その人が自分に何を与えてくれる人かを知っている」についてですが、ここが自社の商品力、自分自身の営業力、つまりクロージングです。問い合わせからのクロージング割合はどれくらいですか?同業他社と比べて良いですか?上記のお膳立て(仕組みづくり)が完璧であっても商品が売れない場合には、商品に問題があります(周りにいませんか?人とのつながり方は完璧なのに商品が売れていない人。そんな人は誰かと組むことが重要です。ただし、何が売れるかの審美眼は持たないことも多いので、正当に儲けている人と組んでください。・・・いや、違います。待ってください。人とのつながりは続けて、正当に儲けている人から声がかかるのを待ってください)。

例えばコンサルの営業で特に効果があるものは「セミナー(第4フェーズの提案、クロージングのフック)」です。セミナーによって自分たちの専門性を開示することによって飛躍的にクロージング効果が高まります。ただし、この「セミナー」も集客までの仕組みづくり(つまり第3フェーズまでの仕組みづくり)と、付加価値の高い情報の提供と、この二つがしっかりと担保されているからこそやる意味があるのであり、もし担保されていないのであれば逆効果になることもあります。

「人とのつながり」はビジネスでは非常に大切ですが、それをストレスと感じてしまう方も多くいると思います(日本の会計業界は、人付き合いの苦手な方が多いです)。

ただし、戦略がしっかりと定められている中での「人とのつながり」は、(感情が入らない)ポジショニングに落とし込めるので、本来「人とのつながり」が苦手な方でも自分をしっかりと保つことができます(戦略と考えればよいだけです)。あとは経験で話せるようになります。

「知らないということは罪なこと」とよく言われますが、ビジネスにおいて同じくらいに「知られないということは罪なこと」であると思っています。どのように自分たちのサービスや商品をポテンシャルクライアントの元へ届けるか、そのために自分自身が行うことは何であるかをしっかりと認識し、JGA税理士法人は日々活動をしています。今後も自分たちがどのような戦略をもってビジネスを行っているかなども含めて、我々の行っている情報はなるべく外に発信していこうと思っています。少しでもこのコラムが皆様の考えるきっかけになれば幸いです。