皆様こんにちは、JGA税理士法人/税理士の片瀬と申します。
10月になりついに「インボイス制度」が開始となりました。具体的なインボイス制度への対応(発行側)については、世の中に溢れておりますのでそちらに解説を譲るとして、私からは実際の税務調査における心構え(受領側)をお伝えします。
まず確認してもらいたいのは次の記事。これは日経新聞の9月12日の記事ですが、インボイス制度に対する国税庁の見解について記載されています。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA248UJ0U3A820C2000000/
この記事において、インボイスの税務調査は「大口・悪質」なものに限定されるとあり、また、「記載事項の不備をあげつらうような調査はしない」とされています。つまり、間違えて税額控除を取ってしまっていたとしても、確認できる体制にあればインボイスの記載の不備等はある程度許容されるということです。
ポイントとしては「大口・悪質」に該当しないこと。では、「大口・悪質」とはどの範囲までをいうのでしょうか。
【ポイント】
①金額ポリシー ⇒大口の排除
②全件チェック or サンプルチェック or チェックなし ⇒悪質の排除
※金額ポリシーで「大口対策」+チェック体制で「悪質対策」です!
まずは考え方としてこの2つに分類したうえで、自社の対応を確認してください。
<金額ポリシーについて>
会社によって大口の取引とされる金額は異なります。法律上の、一律の金額基準はない中で、国税庁長官が大口という言葉を使っているのには国税庁の中で金額基準を設けているようにも思います。これから実務で明るみになる部分なので一概に言えないですが、小規模の企業が社内ポリシーとして持つのであれば10万円を基準としてもらえたらと思います。
※対価10万円以下のものであれば、たとえ間違えていたとしても「重要性から」大口に該当することはないと考えています。
<チェック体制>
一律な規定がないので、なかなか社内の金額基準をつくることは難しい。反対に税務調査の担当官も大口だから指摘するということも難しいのです(恣意性が介入するため=何を持って大口というかが不明確なため)。
重要なのは「チェック体制」でしょう。これは取引の項目(類型)ごとに分類しましょう。ここが大きなポイントです!
- 仕入・外注費について
- 販管費について
- その他損失について
これらの項目につき、もちろん原則的には網羅的に全件チェックする体制を構築することが最も望ましいですが、実務対応とのバランスを考えた場合には、必ずしも全件チェックは行われない(行えない)でしょう。ポイントはあくまでも「悪質でない」ということの充足です。
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仕入・外注費・固定資産について ⇒全件チェック
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販管費について ⇒サンプルチェック ※家賃は個別確認
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その他損失について ⇒サンプルチェック
実務的には、この対応が現実的と考えています。
一般的に販管費に計上される業者がインボイス登録していないことは考えづらい。登録していないことがあるとしたら家賃の支払相手先くらい(あとはプロモーション費とか)。そのためここは基本的にサンプルチェックで大丈夫と考えます(金額基準でサンプル取ってください)。その他損失についても消費税の対象となるものはほとんどないので、ここも金額基準でOKです。
実務対応としては、仕入・外注費・固定資産について、ここは全件チェックを行います。基本的に免税事業者はこの部分に集約されます。(エクセルでも良いので)取引先のマスタを作って、インボイス番号を控えていきましょう。
※なお、免税事業者からの請求書に消費税が載っていた場合には、1~3年間は8割控除、3~6年間は5割控除と経過措置がとられています。そのため(8割控除が取れている)3年以内にどのように対応するかを当該免税事業者と交渉して決めるスケジュールで進めてもらえればと思います。
そして、おそらく3年内にはクラウド会計ソフトのストレージに入れた段階での「OCR読取+インボイス登録状況の突合」がなされるようになると思います。ここは現状freeeの方がMFよりも強いですが、いずれのシステム会社においても何かしらの対応は取られるはず。上記の取り扱いで繋いで、システムのアップデートを待つことが実務的な対応になるかと思います。
まずは「①税務調査で指摘されない最低限の仕組みを作り、②そしてシステムの成熟を待つ」。これで実務に取り組んで頂ければと思っております。参考にしていただければ幸いです。