皆様こんにちは。JGA税理士法人/税理士の片瀬です。
前回のコラムでは最近問合せの多くなっている「海外子会社管理」についてお話しをさせていただきました。今回は「海外子会社の不正監査」についてです。
この2つの業務「海外子会社管理」と「海外子会社の不正監査」は、とてもよく似ている業務ではありますが、実際には業務の目的が異なります。「海外子会社管理」はその目的を業務フローの設定や効率化とすることが多いですが、「海外子会社の不正監査」は不正の発見が目的です。
つまり「海外子会社の不正監査」については、子会社の不正を発見するための契約なので、子会社とは基本的に契約を結ばず、親会社との契約となります。そして表向きは「海外子会社管理」という内部統制業務の一環として契約を結ぶことになるのです。
※国によっては不正監査を行っていることが明るみになると(その金額にもよりますが)命の危険もあるために情報は最低限の共有のみに留めます。
海外子会社の不正監査において、重要なことは「入出金の把握」と「不正パターンの把握」です。
我々の経験でも海外での不正における多くは、現金預金まわりの不正であることに違いはありません。担当者にどこまでの権限を委譲しているかは会社によって異なりますが、現地managerにファイナンス関連の権限を渡している会社はキャッシュフローをしっかりと確認しなければなりません。特に通帳の入出金の内容を全て事細かに確認する体制をつくりましょう。
ただ、それでも多額の金額を会社口座から抜かれて、雲隠れされるということが後を絶たないので、現地担当者に対する権限の範囲は必ず詳細を定めるべきです(それも保守的・性悪説で)。
日本人代表者にしか権限を委譲していないはずなのに、お金を抜かれることも発生しています。日本人代表者が現場で忙しく、代理でその日本人代表者にしか付与していない権限を現地担当者に渡していないか、形式と実態の両面から確認することも必要です。
会社規模が小さいうちはキャッシュに関する不正、会社規模が大きくなると会計に関する不正と不正の種類も会社フェーズによって異なります。そのため自社の規模感によって対応する不正監査も異なるのです。
「不正パターンの把握」も重要です。リスクの検証をするときにパターンを知らなければ、潜在リスクを評価することができません。リスク=可能性を表します。可能性としてのリスクと、その可能性が顕在化しないためにどのようにコントロールするかがとても重要です。
もちろん「不正パターンの把握」は、上記「可能性のコントロール」という予防的な側面だけにとどまりません。海外従業員の不正は、従業員に気がつかれた瞬間に非常に難しいものとなります。従業員は全力で不正を隠そうとしますし(関係あるものからないものまで、全て消去されますし)、場合によっては暴力等による威圧をしてきます。そのためヒアリング等により、じっくりと内容を吟味してということが実務上は難しいのです。
海外不正への対応としては、一方的にクリティカルな証拠を押さえて、一時で全てを片付けることが重要なのです。「不正パターンの把握」をすることにより、それが可能になるのです。パターンごとにクリティカルなポイントは決まっていますので。
では、どのような「不正パターン」があるのか、当コラムにおいては次回以降でこの「不正パターン」について言及してまいります。皆様の海外子会社経営の一助になれば幸いです。
※海外子会社管理業務は、日本とタイと協力して行っており、当該コラムについても弊社タイ法人のWebサイトにもアップしております。
代表社員/税理士 片瀬 陽平
税理士業界が変遷する中、国際ビジネスのみが残された最後の領域であると考え、税理士法人時代から国際ビジネスに長く携わる。国際ビジネスには2種類(日本側・現地側が)あり、現地ビジネスに関しては、現地に駐在しなければクライアントにベストプラクティスの提案ができないと考え、2013年にメキシコに渡り、現地会計コンサルティングファームの立ち上げを行う。渡墨後は、日系企業のメキシコ進出サポート及び現地日系企業への経営コンサルティング(事業計画/年度予算作成、内部統制・不正調査、各種DD、連結パッケージ作成など)を主に行っていた。2016年にはタイに渡り、Bridge Note (Thailand)Co.,Ltd.(現BM Accounting Co.,Ltd)を立上げ、次いでインドネシアのPT. Bridge Note Indonesiaの移転価格事業部を組成した。また、2018年にタイ移転価格税制協力会の発起人としてタイ移転価格税制サービスレベルの底上げを行う。専門領域は、経営コンサルティング、インバウンド支援、国際税務コンサルティング、社内DX化など多岐にわたる