皆様こんにちは、JGA税理士法人/税理士の片瀬です。今回のコラムは、税務調査の指摘パターンでみる「国外関連者に対する寄附金」です。
Google Search Console(GSC)で確認しても「国外関連者 寄附金」での検索/表示が非常に多く、私のコラムの人気記事も第一回目の調査での指摘の多い項目「国外関連者に対する寄附金」についてです。「国外関連者に対する寄附金」はウェブ検索が頻繁にかかるキーワードに感じます。
ただし、ウェブ検索で「国外関連者 寄附金」の他社コラム等を確認しても、法律条文を共に記載していることが多く読み込むのが大変です。もっと、実務にドンピシャの内容の記事の方が分かりやすいので、今回は当該寄附金に関して、税務調査での具体的な指摘パターンを下記に列挙していきます。
「正直、法律は面倒くさいので読みたくない!」という方に向けたものなので、これらのパターンでイメージを掴んで頂ければ幸いです。
【税務調査によるパターン】
- 海外子会社への技術供与や無形資産貸与に係るロイヤルティ対価を回収していない場合
- 海外子会社への役務提供に係る役務提供対価を回収していない場合
- 駐在員の海外源泉給与を日本親会社が負担している場合(日本給与/較差補填を除く)
- 海外子会社への親子ローンに係る利息を回収していない場合
- 長期にわたり海外子会社に対する売掛金を回収していない場合(貸付認定/利息未回収)
- 海外子会社に対する売掛金等の債権を放棄した場合
- 海外子会社に赴いた出張者の交通費・宿泊費・日当などを負担している場合(親会社業務を除く)
- 海外子会社の業務(管理業務など)を親会社にて行い、対価を回収していない場合
- 海外子会社が親会社システム(管理・営業システムなど)を利用しているのに対し、対価を回収していない場合
- 海外子会社への役務提供対価の支払いに実態や成果物がない場合
- 海外子会社への固定資産や棚卸資産の販売につき、市場価格と乖離している場合(低額譲渡)
- 海外子会社から固定資産や棚卸資産の購入につき、市場価格と乖離している場合(高額購入)
- 海外子会社への棚卸資産等の販売につき、第三者への販売価格と乖離している場合(内部CUP)
- 海外子会社から棚卸資産等の購入につき、第三者から購入価格と乖離している場合(内部CUP)
- 見本品やサンプル品を海外子会社へ無償で提供した場合
- 海外子会社のクレーム対応に係る費用を親会社が負担した場合
- 海外子会社が負担すべき保険料を親会社が負担した場合
- 海外子会社の債務保証を親会社が行っているが、保証料を収受していない場合
- 海外子会社が負担すべき税金等を親会社が負担した場合
- 駐在員のホームリーブのための費用を親会社が負担した場合(年複数回、高額になる場合)
- 駐在予定者の準備費用・支度金を親会社が負担した場合(法人契約でない、高額になる場合)
- コストシェアリング契約/費用分担契約(Cost Contribution Agreement)の実態がない場合
※当該事例は経験によって書いていますので、あくまでも参考として。
他にもありそうですが、主なものはこのあたりだと思います。移転価格税制とリンクする部分ですので、両面から検証(有利に反証)できることが重要です。
考え方としては、このようなもので対価性がないもの(つまりお金を回収していないもの)については、寄附金課税と指摘される可能性がかなり高いです。この寄附金課税の指摘リスクがある場合には、一定の金額を回収するという(契約関係などの)実態を作ることによって移転価格の考え方で主張することができる可能性があります。
寄附金課税は、YESかNOであり、100%の課税(100%損金否認)になるので、税務当局からの指摘も容易であり、金額も高額になる可能性があります。実務では移転価格の考え方まで含めて、どのように反証するかを事前に検証することが大切です。
※法律面から国外関連者に対する寄附金課税を確認したい場合はこちら