調査での指摘の多い項目「国外関連者に対する寄附金」について

はじめまして。税理士の片瀬です。

メキシコ・インドネシア・タイへの駐在員経験より、国際税務を専門とし、各国の国際税務に通じていますので、日本側の国際税務および現地側の国際税務を両面から今後お伝えできればと考えています。

第一回目の今回は、日本の税務当局から近年指摘の多い「国外関連者に対する寄附金」について確認してみることにします。

※人気記事だったため、パート2として「5分でわかる国外関連者に対する寄附金~税務調査で追徴されるケースが多すぎる~」を執筆しています。併せてご確認ください。

実際の調査において、寄附金として課税されるケースの多くが下記の項目となります。

①子会社への技術供与に係るロイヤルティ対価を回収していない場合

②子会社への技術役務提供に係る役務提供対価を回収していない場合

③駐在員給与を日本親会社が負担している場合

国外関連者に対する寄附金は、日本国内の寄附金課税と同様に、「寄附行為」の有無をその課税根拠としており、寄附行為があったと認められる場合には100%損金算入は認められない旨がその規定において定められています。

例えば上記①の例では、ロイヤルティ対価を回収しておらず、寄附行為(対価性のない贈与)に該当してしまうものと考えられます。特に日本が製造業、現地も製造業の場合には、日本の技術・ノウハウを利用して海外で活動することが前提となりますので、もしロイヤルティを収受していない場合には、早急に対応をご検討ください。調査の際の注意は「子会社が赤字のため・・・・」と言わないことかと思います。赤字の負担こそ寄附金課税そのものなので。

ただし、このロイヤルティ対価を回収していない事実について、当社から子会社への「所得の移転」があったということも可能であり、税務調査を担当する調査官によって指摘内容が変わってくることもあり得ます。この「所得の移転」を指摘された場合には、その論点が寄附金から移転価格に変わることとなります。

実務上は、この寄附金課税と移転価格課税の明確な線引きが曖昧なために、その判断を国税局が出している「移転価格事務運営要領の制定について(事務運営指針)」に求めることとなります。当該事務運営指針3-20(https://www.nta.go.jp/law/jimu-unei/hojin/010601/02.htm)において、国外関連者に対する寄附金の取り扱いが下記のように明記されています。

【国外関連者に対する寄附金】

3-20 調査において、次に掲げるような事実が認められた場合には、措置法第66条の4第3項の規定の適用があることに留意する。

イ 法人が国外関連者に対して資産の販売、金銭の貸付け、役務の提供その他の取引(以下「資産の販売等」という。)を行い、かつ、当該資産の販売等に係る収益の計上を行っていない場合において、当該資産の販売等が金銭その他の資産又は経済的な利益の贈与又は無償の供与に該当するとき

ロ 法人が国外関連者から資産の販売等に係る対価の支払を受ける場合において、当該法人が当該国外関連者から支払を受けるべき金額のうち当該国外関連者に実質的に資産の贈与又は経済的な利益の無償の供与をしたと認められる金額があるとき

ハ 法人が国外関連者に資産の販売等に係る対価の支払を行う場合において、当該法人が当該国外関連者に支払う金額のうち当該国外関連者に金銭その他の資産又は経済的な利益の贈与又は無償の供与をしたと認められる金額があるとき

つまり簡単に言うと、「対価性のない取引」は寄附金に該当しますということです。これだけみると基本的な考え方は日本の寄附金課税の規定と変わらないですね。

棚卸取引で寄附金課税を指摘されることは多くはなく、やはり金額的に注意してもらいたいものはロイヤルティ・役務提供・給与負担になるかと思います。給与負担については、格差補填金に該当する場合には、日本において負担することも可能となりますので、格差補填金と寄附金課税の関係性についてもご留意ください。

コラムの第一回目は調査において指摘の多い項目である寄附金課税について確認しました。国外に関係会社がある会社様については再度「国外関連者に対する寄附金」についてご確認ください。

最後までお読みいただきありがとうございます。是非併せて「こちら」もお読みください。

【まとめ】

日本側:国外関連者に対する寄附金

海外側:赤字事業年度の支払い