【医療法人化のシミュレーション 第1回】 ~節税効果~

皆様こんにちは。JGA税理士法人/税理士の片瀬と申します。

 

今回から「医療法人化のシミュレーション」についてシリーズでコラムを執筆します。第一回目の今回は~節税効果について~考えてみることにします。

 

もちろん医療法人化をするメリットは「対外的な信用力の向上」や「事業承継のしやすさ」、「資金繰り改善」、「事業拡大」、「事務負担の軽減」など様々なメリットがありますが、やはり一番気になるのは「どちらの方が税金がかからないか?」ということ。まずは、一番分かりやすいところから解説します。

 

所得税の累進課税+住民税10% VS 法人税の実効税率

<課税所得1,000万円の場合>

所得税+住民税=約260万円

法人税=約270万円

<課税所得2,000万円の場合>

所得税+住民税=約700万円

法人税=約640万円

<課税所得3,000万円の場合>

所得税+住民税=約1,240万円

法人税=約1,020万円

<課税所得4,000万円の場合>

所得税+住民税=約1,740万円

法人税=約1,390万円

<課税所得5,000万円の場合>

所得税+住民税=約2,310万円

法人税=約1,800万円

 

実は、課税所得1,000万円で個人クリニックと医療法人は税率がほぼ同じとなります(それ以上であれば法人有利)。いろいろな要素を抜きにした単純比較であり、これが大前提となります。なので、個人クリニックの先生は、まずは昨年度の“個人確定申告書”を引っ張ってきて、第一表の右上の金額「課税される所得金額」の金額をチェックしてみてください。

 

ここが1,000万円を超えるころから医療法人化を意識すると良いでしょう。

 

いろいろな要素を抜きにした単純比較なので、実際に医療法人化を行う時には税額シミュレーションを行うことが必要です。その際には、役員報酬の金額をいくらにするかでパターンがいろいろと分岐するために、複数パターンを比較検討することになります。では、役員報酬パターンによる節税効果についても簡単に解説します。

 

医療法人化の検討を開始することが比較的多い課税所得2,000万円で確認してみます。

 

<課税所得2,000万円の場合>

個人:所得税+住民税=約700万円

法人:↓法人に関しては、法人所得を800万円として、“役員報酬を1,200万円”と設定した場合

法人税=約200万円

所得税+住民税=約260万円

合計   約460万円

 

先ほどの、(課税所得2,000万円)で法人税のみを支払った場合の税額が約640万円であったので、(法人所得800万円+個人所得1,200万円)と分散するだけで180万円の節税になったりもします。

 

更に複数パターンのもう1パターンを。

 

法人:↓法人に関しては、法人所得を800万円として、役員報酬を“あなた600万円+配偶者600万円”と設定した場合

法人税=約200万円

所得税+住民税=約75万円+約75万円=約150万円

合計   約350万円

 

この場合の差は、当初から約290万円。日本は基本的に超過累進課税を採用しているために、所得を分散すればそれだけ税額は安くなる可能性があります。まず皆様にイメージして頂きたいのは、目的(実態)に応じて所得を分散することで節税は可能であるということ。この場合、どのような組織にするかの全体感をもったイメージや、実際のストーリーがとても重要です。ただの利益の付け替えでは、税務署から否認されてしまうのは言うまでもありません。

 

もちろん、これはあくまでも一例で実際には各種控除があり、優遇税制もあったりするためここまで大きな差にはならない想定ですが、それでも大きな差が発生することは間違いありません。医療法人化を検討する場合には、まずは税額シミュレーションを税理士に依頼しましょう。

 

<税額シミュレーションの必要資料>

①確定申告書

②借入金契約書及び返済予定表

③リース契約書

 

※当該記事はクリニック経営マガジンに掲載された記事のアーカイブとなります。

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