医療法人の組織形態とは?

皆様こんにちは。JGA税理士法人/税理士の片瀬と申します。

 

今まで全5回の「医療法人化のシミュレーションシリーズ」をご拝読いただきまして誠にありがとうございます。「医療法人化のシミュレーションシリーズ」では、節税目的での医療法人化は近年デメリットが非常に多くなっており、それでも本当に医療法人化を行うべきなのかの意思決定に資する内容で執筆しました。

 

今回からの「医療法人化への道シリーズ」は、それでもなお、医療法人化を目指すドクターの皆様に向け、より具体的な医療法人の設立について執筆してまいります。

 

第1回目の今回は~医療法人の組織形態とは?~についてです。

 

【医療法人の組織形態】

  • 社団医療法人 (医療法人社団ともいわれる) ⇒ 人の集まりで設立
  • 財団医療法人 (医療法人財団ともいわれる) ⇒ 物の集まりで設立

 

まず「社団」と「財団」について、社員(一般の会社でいう役員)が集まって設立する形態が社団であり、目的のために財産を提供することで設立される形態が財団です。

ただし、財団医療法人では設立時に提供される財産が寄附(みなし譲渡課税や贈与税の対象。非課税措置の規定もあるが実務上殆ど受けられない)となるため、基本的には社団医療法人での設立となります。※以下からも分かる通り財団医療法人は全体の0.6%しかありません。

 

【割合(合計:57,141医療法人)】

財団医療法人:0.6%

社団医療法人(持分の定めあり):65.6% ⇒ H19.3.31以前に設立

☞社団医療法人(持分の定めなし):33.7% ⇒ H19.4.1以降に設立 

 

そのため、特段に目的がある法人設立以外は社団医療法人で問題ありません。また、現在の規定では持分の定めのある(持分とは一般の会社でいう資本金)医療法人は設立できないため、持分の定めのない社団医療法人を設立することとなります。

 

【基金拠出型と拠出型】

また、医療法人の設立の仕方には「基金拠出型医療法人」と「拠出型医療法人」の2つに分類することもできます。これは基金制度を採用する場合と採用しない場合に違いがあります。

※基金制度※

医療法人に拠出された金銭・財産で、定款に定めるところにより、一定の場合に拠出者に対して返還義務を負う制度をいう。

⇒医療法人は、H19年度の改正により、持分を定めることができなくなったため「持分制度(簡単にいうと資本金)」から「基金制度(簡単にいうと無利息の借入金制度)」に変更されたという考え方が分かりやすい。

 

この「基金拠出型医療法人」と「拠出型医療法人」の2つのパターンにおいて、特に違う箇所は税金の取り扱いで、“対価性がある”基金拠出型よりも、“対価性のない”拠出型の医療法人の方が支払う税金が多くなります。

 

<基金拠出型医療法人(対価性あり)の税金計算

ドクター個人 ⇒ 基金を対価とした譲渡所得

医療法人 ⇒ 対価性があるため課税関係なし

 

<拠出型医療法人(対価性なし)の税金計算

ドクター個人 ⇒ 無償の譲渡としてみなし譲渡益課税

医療法人 ⇒ 対価性がないため贈与として贈与税課税

 

つまり、いろいろと分岐が多い医療法人の形態ですが、実務上は、次の医療法人形態の一択となります。

 

【結論】

「出資持分のない基金拠出型の社団医療法人」

 

※ここに注意!!※

出資持分のない法人については、出資持分が0だから交際費は「特例の800万円控除」が使えるというわけではありません。次の金額を出資持分に準ずる額として、これが1億円を超える場合には交際費の特例である800万円控除が利用できなくなるため注意が必要です。

 

(期末総資産簿価▲期末総負債簿価▲当期利益)×60%>1億円

 

※当該金額をその時点において減額することはできないため、事前のスケジューリングが大切です。

※いきなり交際費800万円を費用に計上できなくなると、税額ベースで数百万円の追加納付が必要となります。

 

その他の形態の医療法人を設立したい場合には、個別にご相談いただくとして、当コラムでは99%のドクターが選ぶ「出資持分のない基金拠出型の社団医療法人」の設立について、今後詳細にお伝えしていきます。また、「医療法人化 VS MS法人設立」は永遠のテーマのため、当「医療法人化への道シリーズ」と並走して「MS法人設立への道シリーズ」も執筆してまいります。是非お楽しみに!

 

※当該記事はクリニック経営マガジンに掲載された記事のアーカイブとなります。

【医療法人化への道 第1回】 ~医療法人の組織形態とは~