いつも当コラムをお読みいただきありがとうございます。JGA税理士法人/税理士の片瀬と申します。
今日は「ビジネスの作り方」について話そうと思います。
もちろん感覚的にビジネスを始める方が非常に多く、そういう方の方がむしろ上手くいっているため、そのような方たちの行動を理論的に考えてみようと。今日のコラムは「感覚知を共有知に落とし込む」ためのものとなります。
まず、成功する方たちに共通する考え方は、「ケチ」であること。失敗する方の多くがお金をかけなければビジネスが開始できないと考えていること。
今、あなたがビジネスを始めるとして、想像でも良いので予算を作る過程を考えてみてください。はっきり言ってビジネスを始めたばかりで予算作っている会社なんてないのでほぼほぼ空想で。心理テストみたいなものです。ではいきますね。
予算には、「売上予算」と「原価予算」、「経費予算」があります。
問題①:あなたはどこから作り始めますか?
問題②:経費予算(ランニング)のお金はどのように賄いますか?
この問題に対して、「経費予算」と答えた方は感覚的にビジネスに向かない人だと個人的に考えています。たぶん「ケチ」でもない方だと。そのような方は理論的に考えて、あえて「ケチ」でいることを振舞う必要があるかもしれません。
そもそもビジネスで成功する人は「経費予算」を(最初に)考えることはまずありません。利益がまるごとポケットに入るように経費予算は「0」で考えることが多いのです。つまり問題②についてもランニングのお金を賄うことなんて殆どの場合に考えもしません(あくまでも「初めての企業」に関してです。2回目3回目となると使いどころが分かるので、この限りではないです)。
もちろん業種にもよりますが、、、基本的に(個人の)持ち出しが必要な仕事を「初めてのビジネス」としてチョイスする時点でビジネスセンスがないように感じてしまいます。
「売上予算」と「原価予算」については、業種によって異なりますが、基本的には売上予算を検討して、原価は自分の体を使って何とか頑張るということになります。(その他の原価がかかったとしても)売上さえ立てばビジネスが成立する状況でなければ、「初めてのビジネス」としては失敗だと個人的に思います。
世の中には、プロモーションすれば売れると考えている人が多くいます。正直いうとプロモーションすれば売れるものはプロモーションしなくても売れます。これが真理です。売れて売れて仕方ないものをプロモーションにてブーストするという考え方が基本です。
では、次に売上をどのように作っていくか。ここは多くの方が悩むところです。
【質問】
まず独立するために商品やサービスのアイデアがなければならないと思いますか?
「違う」と答える場合には、何が必要だと思いますか?
私は「違う」、必ずしも商品やサービスのアイデアは必要ないと考えています。自分のアイデアが正しいと感じている人が世の中には溢れ、多くの場合にそのような人たちが独立します。そしてその大半は失敗して消えていきます。なので独立は難しいという考えが頭にこびりついてしまうのです。壊すべくは自分の凝り固まった「アイデア」というものに対するイメージです。
独立するために必要なことは、
まず「何が売れているかを分析すること」です。
そして「売れている理由を考えること」です。
最初のビジネスはそれらを参考にすればよいのです。
1つの商品を売るために必要な構成要素は何だと考えますか?
【構成要素】
①商品
②金額
③場所
④売り方
⑤時間軸(流行/制度改正/タイミング)
⑥想定クライアント
簡単にいうとこんなところでしょう。
「アイデアは商品やサービスだけですか?」
そもそもそれが間違いなのです。ビジネスを形作る(売上を形作る)要素は商品だけではありません。商品はいろいろな人が行っているものを参考にさせてもらいましょう。イノベーションは諦めてください。
また、個人的には「金額は固定」することが重要と考えています。安く大量に売って薄利を得るというビジネスモデルは今後必ず破綻します。
・自分が稼働するんだから安くうけてもいいやという考えが独立当初は頭に浮かび
・発注側も独立したての人だから安く使えるなという考えが頭に浮かびます
ビジネスは最初の始め方の延長線で進んでいきます。多様性の時代になり、マスマーケティングが意味をなさなくなっているため、薄利多売のモデルはなくなります。安くうけるとそれが自分たち(自社)の価格となります。利益を出すためには、多くの人を低賃金で雇い、多くの仕事をこなさなければなりません。薄利多売モデルに最初から片足を突っ込むことになるのです。(昔の職場のつながりで独立したとしても、絶対に安くは受けないこと。私なら会社勤めの際の自分の時間単価の10倍以上の金額で値段設定します。⇒そして「えっ????冗談だよね????」という顔をされます。)
「初めてのビジネス」は、①商品・サービスと②価格は固定させた方が賢明です。
アイデアは③と④に使うべき。
場所は簡単な例を出すと「海外」です。
自分が選んだ①商品を最も求めていて、最も競合がいない国を選ぶのです。調べるのは頑張ればそんなに難しくありません。
私自身の独立も、まずは③の「場所」にアイデアを費やしました。私の専門の1つに「移転価格税制」という税制があるのですが、全世界的にこの税制にテコを入れようという機運が高まったのが2015年であり、2015年に欧米諸国・日本・中国に全世界的に税制改正がなされました。
ただ、その2015年の改正は先進国のみであり、新興国は今後時期をみて国内法を整備していくという流れだったのです。そこで2016年からインドネシアとタイで移転価格文書の作成を自身の「初めてのビジネス」として開始し、各国の法整備についても2016年末にはインドネシアで、2018年にはタイで、それぞれ移転価格税制が改正されました。
このように「場所」と「時間軸」に絞って考えた結果は、まさにブルーオーシャンでのビジネスを開始することできました。自分が営業活動を行わなくてもクライアントからドアノックがあるという状況。今でも専門性の高さを自身の武器とさせてもらえているのは、最初にこのレールがあったためです。
その他にも、会計業務もその昔はソロバンで計算し、紙に書いて帳簿を保存していました。その後、電卓を使うようになり、紙の帳簿がパッケージの会計ソフトになり、クラウド会計システムになり、そろそろ全自動になるというように時代の変遷と共に変わっています。最近成功している会計事務所もクラウド会計を上手に利用していたりします。これも場所や時間軸の範疇です。
世間では、税理士はAIに奪われる仕事と言われていますが、業界の中に身を置いている自分としてはチャンスしかありません。
税理士7万人ほどいるのですが、平均年齢は65歳以上というような業界です。それだけいてもほとんどがAIネイティブではありません。スマホネイティブでも、そもそもクラウド会計のネイティブでもありません。自身が身を置く場所にほとんど競合がいない世界は、まさにブルーオーシャンです。
もう一度。「初めてのビジネス」では、③と④にアイデアを使うべきです。
商品は今自分が働いている業界の延長線で構いません。イノベーションのような画期的なアイデアもいりません。
※単価設定は絶対に間違えないように。
また、④の「売り方」で最も効率的なことは自身のブランディングです(紹介案件を含みます。むしろ紹介案件がメインと言ってもいいです)。以前のコラムで海外での認知が必要(人とのつながり~シェア拡大の方策~より)と書きましたが、日本国内でも認知を取ると強いです。ただ、この認知活動は忙しくなるととたんにできなくなるので、独立間もない時間があるときに、その時間をかけることが効率的だと思っています。
専門性が高い商品ほど自身のブランディングは有用です。反対に汎用品にはあまり意味がありません。日本国内での認知は競合が多いので、どうしても長期間になってしまいます。紹介をもらうための関係づくりも長期間になります。
⑤時間(流行/制度改正/タイミング)は結構難しいです。私は幸い時流を掴んで独立しましたが、一時的に良くても潮目が変わると売上が激減なんてことも。そのため、時間(流行/制度改正/タイミング)をアイデアとするのではなく、④売り方の延長線で⑤時間(流行)を考えることができれば強いなと思います。
長くなったので、今回はここまで。皆様がビジネスを始めるにあたり参考としてご利用いただければ幸いです。上手くいった場合には、どのようにして上手くいったかを聞かせてもらえると嬉しいです。では次回のコラムをお楽しみに!