独立企業間価格の意義~移転価格税制~

皆様こんにちは、JGA税理士法人/税理士の片瀬です。今回から私の専門である移転価格税制についてシリーズで執筆を行おうと考えています。

 

少し難しい内容となりますが、移転価格文書の作成をご検討中の皆様、既に移転価格文書の作成を行った皆様に価値のある内容をお届けいたしますので、ご確認頂ければ幸いです。

 

今回は、移転価格税制の基本である「独立企業間価格」や「ベストメソッドルール」についてです。

 

【独立企業間価格の意義】

日本の移転価格税制は、日本法人が国外関連者との間で、資産の販売・資産の購入・役務の提供その他の取引(国外関連取引といい、第三者介在取引も含む)を行った場合において、その法人がその国外関連者から支払を受ける対価の額が独立企業間価格にみたないとき(無償譲渡または低額譲渡の場合)、又は、その法人がその国外関連者に支払う対価の額が独立企業間価格を超えるとき(高価買入の場合)は、その法人の所得の計算において、その取引は独立企業間価格で行われたものとみなすこととしている。

したがって、独立企業間価格は、「実際の取引価額のいかんにかかわらず、独立企業間価格に相当する金額が益金に算入され(資産の低価販売等の場合)、独立企業間価格に相当する金額が原価(資産の高価購入等の場合)」とされることになる。

その他、独立企業間価格の算定において、当該取引における価格設定の目的などのいわゆる経済合理性を勘案するかを論点とする事例もいくつか発生しているが、種々の裁判例(松山地裁判決/船舶造船事件、大阪地裁判決/電子部品事件など)を鑑みるに、このような経済合理性を有するか否かについては、検討する必要がないものとされている。つまり独立企業間価格の算定は、法定された各算定手法によって算定されることが要件となるものであり、その他の理由は考慮されないものとなる。

 

【ベスト・メソッド・ルールによる独立企業間価格算定方法の選定】

独立企業間価格の算定については、法定の算定方法のうち、国外関連取引の内容及び当該国外関連取引の当事者が果たす機能その他の事情を勘案して、当該国外関連取引が独立の事業者の間で通常の取引の条件に従って行われるとした場合に当該国外関連取引につき支払われるべき対価の額を算定するための最も適切な方法(ベスト・メソッド)を選定することにより行う必要がある。

 

【ベスト・メソッドを選定するに当たり検討する比較可能性について】

独立企業間価格の算定方法については、独立企業原則に配意しつつ、国外関連取引の内容及び当該国外関連取引の当事者が果たす機能その他の事情を勘案して、独立企業間価格を算定するための最も適切な方法を事案に応じて選定することになる。この勘案する事項の具体的内容としては、国外関連取引及び非関連者間取引に係る措置法通達66の 4(3)‐3に掲げる諸要素のほか、①独立企業間価格の算定における各算定方法の長所及び短所、②国外関連取引の内容及び当該国外関連取引の当事者が果たす機能等に対する各算定方法の適合性、③各算定方法を適用するために必要な情報の入手可能性、④国外関連取引と非関連者間取引との類似性の程度の4つが挙げられる(措置法通達 66 の 4(2)‐1)。

独立企業間価格の算定方法の選定に当たっては、比較対象取引を用いる算定方法が採りうるのか、採りうるとしてどのような非関連者間取引が比較対象取引として適切か等につき、国外関連取引及び非関連者間取引に係る情報や上記①から④までの点を勘案して、最も適切な方法(ベスト・メソッド)を選定する。

 

いかがでしたでしょうか。少し内容が難しいものと思います。移転価格税制は値付けのコンサルティングと同義であり、(価格そのものを是正されるため)もし問題が起こったときの追徴税額等も多額になる傾向があります。そのため、移転価格関連のコラムでは、少し表現が難しくなりますが、内容を詳細に記載しております。網羅的に情報を記載する予定ですので、何度もお読みいただきご確認頂ければ幸いです。

 

【筆者紹介】

JGA税理士法人

代表社員/税理士 片瀬 陽平

税理士業界が変遷する中、国際ビジネスのみが残された最後の領域であると考え、税理士法人時代から国際ビジネスに長く携わる。国際ビジネスには2種類(日本側・現地側が)あり、現地ビジネスに関しては、現地に駐在しなければクライアントにベストプラクティスの提案ができないと考え、2013年にメキシコに渡り、現地会計コンサルティングファームの立ち上げを行う。渡墨後は、日系企業のメキシコ進出サポート及び現地日系企業への経営コンサルティング(事業計画/年度予算作成、内部統制・不正調査、各種DD、連結パッケージ作成など)を主に行っていた。2016年にはタイに渡り、Bridge Note (Thailand)Co.,Ltd.(現BM Accounting Co.,Ltd)を立上げ、次いでインドネシアのPT. Bridge Note Indonesiaの移転価格事業部を組成した。また、2018年にタイ移転価格税制協力会の発起人としてタイ移転価格税制サービスレベルの底上げを行う。専門領域は、経営コンサルティング、インバウンド支援、国際税務コンサルティング、社内DX化など多岐にわたる。