取引単位営業利益法(TNMM)の要件及び意義~移転価格税制~

皆様こんにちは、JGA税理士法人/税理士の片瀬です。引き続き、移転価格税制について詳細を執筆いたします。

 

少し難しい内容となりますが、移転価格文書の作成をご検討中の皆様、既に移転価格文書の作成を行った皆様に価値のある内容をお届けいたしますので、ご確認頂ければ幸いです。

 

今回は、移転価格税制の独立企業間価格算定方法の1つである「取引単位営業利益法(TNMM)」の意義と要件についてです。前回の「TNMMの長所及び短所」と併せてご確認ください。

 

【TNMMによる独立企業間価格選定の意義】

TNMMは関連会社間取引の営業利益の水準と非関連会社間取引の営業利益の水準を比較して検証する方法である。措置法施行令第39条の12第8項では、棚卸資産の製造、輸出又は再販売に係る独立企業間価格の算定におけるTNMMの適用が明記されている。TNMMは、国外関連取引の当事者のうち最も複雑でなく、かつ、重要な無形資産又は独自の資産を有しない検証対象者の営業利益の水準を比較可能な同業者の営業利益の水準と比較し、当該関連会社間取引が独立企業間価格で行われているかどうかを検証する方法をいう。

 

【TNMMの要件】

<再販売価格に基づくアプローチ>

国外関連取引に係る棚卸資産の買手が非関連者に対して当該棚卸資産を販売した対価の額(再販売価格)から、当該再販売価格に㋑に掲げる金額の㋺に掲げる金額に対する割合(比較対象取引と当該国外関連取引に係る棚卸資産の買手が当該棚卸資産を非関連者に対して販売した取引とが売手の果たす機能その他において差異がある場合には、その差異により生ずる割合の差につき必要な調整を加えた後の割合)を乗じて計算した金額に当該国外関連取引に係る棚卸資産の販売のために要した販売費及び一般管理費の額を加算した金額を控除した金額をもって当該国外関連取引の対価の額とする方法をいう。

㋑ 当該比較対象取引に係る棚卸資産の販売による営業利益の額の合計額

㋺ 当該比較対象取引に係る棚卸資産の販売による収入金額の合計額

 

<原価に基づくアプローチ>

国外関連取引に係る棚卸資産の売手の購入、製造その他の行為による取得原価の額に、㋑に掲げる金額に㋺に掲げる金額の㋩に掲げる金額に対する割合(販売者が当該棚卸資産と同種又は類似の棚卸資産を非関連者に対して販売した取引(比較対象取引)と当該国外関連取引とが売手の果たす機能その他において差異がある場合には、その差異により生ずる割合の差につき必要な調整を加えた後の割合)を乗じて計算した金額及び㋑ⅱに掲げる金額の合計額を加算した金額をもって当該国外関連取引の対価の額とする方法

㋑ 次に掲げる金額の合計額

ⅰ 当該取得原価の額

ⅱ 当該国外関連取引に係る棚卸資産の販売のために要した販売費及び一般管理費の額

㋺ 当該比較対象取引に係る棚卸資産の販売による営業利益の額の合計額

㋩ 当該比較対象取引に係る棚卸資産の販売による収入金額の合計額から㋺に掲げる金額を控除した金額

 

<販売管理費に基づくアプローチ>

国外関連取引に係る棚卸資産の再販売価格から、当該国外関連取引に係る棚卸資産の販売のために要した販売費及び一般管理費の額に、比較対象取引に係る棚卸資産の販売による営業利益の額の合計額と当該比較対象取引に係る棚卸資産の販売のために要した販売費及び一般管理費の額との合計額の当該比較対象取引に係る棚卸資産の販売のために要した販売費及び一般管理費の額に対する割合を乗じて計算した金額を控除した金額をもって当該国外関連取引の対価の額とする方法をいう。

また、国外関連取引に係る棚卸資産の売り手の購入その他の行為による取得の原価の額に、当該国外関連取引に係る棚卸資産の販売のために要した販売費及び一般管理費の額に比較対象取引に係る棚卸資産の販売による営業利益の額の合計額と当該比較対象取引に係る棚卸資産の販売のために要した販売費及び一般管理費の額との合計額の当該比較対象取引に係る棚卸資産の販売のために要した販売費及び一般管理の額に対する割合を乗じて計算した金額を加算した金額をもって当該国外関連取引の対価の額とする方法をいう。

 

いかがでしたでしょうか。移転価格税制は値付けのコンサルティングと同義であり、(価格そのものを是正されるため)もし問題が起こったときの追徴税額等も多額になる傾向があります。そのため、移転価格関連のコラムでは、少し表現が難しくなりますが、内容を詳細に記載しております。網羅的に情報を記載する予定ですので、何度もお読みいただきご確認頂ければ幸いです。

 

【筆者紹介】

JGA税理士法人

代表社員/税理士 片瀬 陽平

税理士業界が変遷する中、国際ビジネスのみが残された最後の領域であると考え、税理士法人時代から国際ビジネスに長く携わる。国際ビジネスには2種類(日本側・現地側が)あり、現地ビジネスに関しては、現地に駐在しなければクライアントにベストプラクティスの提案ができないと考え、2013年にメキシコに渡り、現地会計コンサルティングファームの立ち上げを行う。渡墨後は、日系企業のメキシコ進出サポート及び現地日系企業への経営コンサルティング(事業計画/年度予算作成、内部統制・不正調査、各種DD、連結パッケージ作成など)を主に行っていた。2016年にはタイに渡り、Bridge Note (Thailand)Co.,Ltd.(現BM Accounting Co.,Ltd)を立上げ、次いでインドネシアのPT. Bridge Note Indonesiaの移転価格事業部を組成した。また、2018年にタイ移転価格税制協力会の発起人としてタイ移転価格税制サービスレベルの底上げを行う。専門領域は、経営コンサルティング、インバウンド支援、国際税務コンサルティング、社内DX化など多岐にわたる。