取引単位営業利益法(TNMM)の長所及び短所~移転価格税制~

皆様こんにちは、JGA税理士法人/税理士の片瀬です。引き続き、移転価格税制について詳細を執筆いたします。

 

少し難しい内容となりますが、移転価格文書の作成をご検討中の皆様、既に移転価格文書の作成を行った皆様に価値のある内容をお届けいたしますので、ご確認頂ければ幸いです。

 

今回は、移転価格税制の独立企業間価格算定方法の1つである「TNMMの長所及び短所」についてです。次回の「TNMMの要件及び意義」と併せてお読みください。

 

【TNMMの長所及び短所】

取引単位営業利益法(Transactional Net Margin Method:TNMM)は、国外関連取引に 係る営業利益の水準と比較対象取引に係る営業利益の水準を比較する方法であるが、営業利益は売上総利益のように価格と近接した関係にはなく、独立企業間価格の算定は基本三法と比較して間接的なものとなる。

 

他方、営業利益の水準も取引の当事者が果たす機能の差異によって影響を受けることがあるが、事業を行う場合に遂行される機能の差異は、一般的に機能の遂行に伴い支出される販売費及び一般管理費(以下「営業費用」という。)の水準差として反映され、売上総利益の水準では大きな差があっても営業利益の水準では一定程度均衡すると考えられることから、取引の当事者が果たす機能に差異があっても調整が不要となる場合がある。したがって、取引単位営業利益法は、基本三法よりも差異の影響を受けにくい方法ということができ、公開情報から比較対象取引を見いだすことができる場合が多くなる。

 

このため、国外関連取引と非関連者間取引との間に措置法施行令39条12⑧㈡∼㈤までに規定する割合(利益指標)の算定に影響を及ぼすことが客観的に明らかな差異が認められない限り、当該非関連者間取引は取引単位営業利益法を適用する上での比較対象取引として採りうることに留意する必要がある。

 

上記のような特徴から、取引単位営業利益法の適用においては、企業単位の事業において非関連者が果たす機能と国外関連取引の当事者が果たす機能との類似性が高く、利益指標の算定に影響を及ぼすことが客観的に明らかな機能の差異が認めらない場合に、当該事業を当該国外関連取引に対応する一の取引とみなして比較対象取引の選定を行える場合がある。

 

なお、価格や売上総利益の水準よりも営業利益の水準に対して影響を及ぼす可能性のある要因(経営の効率性に係る差異等)が存在する場合があることから、取引単位営業利益法の適用を検討する場合には、こうした点にも留意する。

 

いかがでしたでしょうか。移転価格税制は値付けのコンサルティングと同義であり、(価格そのものを是正されるため)もし問題が起こったときの追徴税額等も多額になる傾向があります。そのため、移転価格関連のコラムでは、少し表現が難しくなりますが、内容を詳細に記載しております。網羅的に情報を記載する予定ですので、何度もお読みいただきご確認頂ければ幸いです。

 

【筆者紹介】

JGA税理士法人

代表社員/税理士 片瀬 陽平

税理士業界が変遷する中、国際ビジネスのみが残された最後の領域であると考え、税理士法人時代から国際ビジネスに長く携わる。国際ビジネスには2種類(日本側・現地側が)あり、現地ビジネスに関しては、現地に駐在しなければクライアントにベストプラクティスの提案ができないと考え、2013年にメキシコに渡り、現地会計コンサルティングファームの立ち上げを行う。渡墨後は、日系企業のメキシコ進出サポート及び現地日系企業への経営コンサルティング(事業計画/年度予算作成、内部統制・不正調査、各種DD、連結パッケージ作成など)を主に行っていた。2016年にはタイに渡り、Bridge Note (Thailand)Co.,Ltd.(現BM Accounting Co.,Ltd)を立上げ、次いでインドネシアのPT. Bridge Note Indonesiaの移転価格事業部を組成した。また、2018年にタイ移転価格税制協力会の発起人としてタイ移転価格税制サービスレベルの底上げを行う。専門領域は、経営コンサルティング、インバウンド支援、国際税務コンサルティング、社内DX化など多岐にわたる。