なぜ海外子会社管理(ガバナンス)は嫌われる?~海外子会社管理~

皆様こんにちは。JGA税理士法人/税理士の片瀬です。

 

コロナ禍が終わりタイに拠点を有する日系企業において、最近問合せを多くいただく業務に「海外子会社管理」というものがあります。今日はこの「海外子会社管理」の業務イメージについてお話ししたいと思います。

 

まず我々がイメージする海外子会社管理とはどのようなものなのかを簡単にお伝えします。

 

海外子会社管理とは、「コミュニケーション」業務です。

 

ただし、ネット記事を確認しても、文献を読んでも、海外子会社管理とは「内部統制業務」の一種とあり、どこにも「コミュニケーション業務」とは記載されていません。形式的には「内部統制業務(リスクマネジメント業務・モニタリング業務など種々ありますが、当コラムに関しては内部統制)」、実質的には「コミュニケーション業務」となり、ここの認識をしっかりと持つことが海外子会社管理を達成するためには不可欠です。

 

もちろんタイ子会社の業務フローを確認して業務が上手く回らない箇所(ボトルネックとなっている箇所)を改善し、より良くビジネスを行えるようにするという「内部統制業務」的な側面も非常に重要です。

 

タイに駐在するMDの中には、この「海外子会社管理」という言葉を苦手に考えている方も多いです。自分の管理体制に対してダメ出しをされ、親会社へ報告されるというイメージが強いのだと思います。

 

本来は海外子会社の業務上のボトルネックを、そのMDの意思決定によって取り除くための統制業務であるのに、管理体制の不備/失態を見つける業務として捉えられがちなのです。

 

「海外子会社管理」は、むしろMDのためにある業務です。MDの皆様においては、タイ人スタッフの行っている業務が非効率なのでは?と思うことも多くあるかと思います。また、それを聞くと「タイの慣行ではこうだから仕方ない」と返答が返ってきませんか?タイビジネスのあるあるです。

 

まず、タイ子会社の経営を行っていくにあたり、会計数値がリアルタイムで確認できないことは本来あってはならないと考えています。リアルタイムに確認することによって最大効率の経営判断ができるのです。

 

できていないとすると、それはクライアントの問題なのか、営業担当者の問題なのか、会計ソフトの問題なのか、経理スタッフの問題なのか、はたまた会計事務所の問題なのか、ボトルネックとなっている項目は何なのか。

 

タイの現地managerを採用すると、そのmanagerは以前の会社で行っていた(自身の経験の)管理体制を構築することとなります。そのmanagerはそれが最も正しい管理であると認識しています。

 

「海外子会社管理」は、(内部統制業務の側面からいうと)種々に広がる業務フローの1点を切出して、時間をかけてMD、Manager、日本親会社の合意形成をとる業務です。皆様の(時間という有限資源の)負担を減らすために行う業務であるのに、親会社から強制的にやらされる業務、はたまた管理体制の不備をみつけるための業務という認識が広がっているのです。

 

主な原因は、切羽詰まった状態で業務を組成し、親会社主導で強引なスケジュール感により依頼をするため。特に多いのが親会社の社内体制の構築(上場準備、連結体制構築など)のものです。連結のパッケージと組換表を作ったから、これにタイの確定会計数値を月初5営業日までに載せるようにと、親会社から強制的に指示が出るのです。

 

そして、親会社からの依頼を達成できないときに、出来ないのは全てタイの管理体制に問題があると認識されてしまう。このような場合、Managerはやめていくし、日本側の担当者、はたまたMDすらも辞めていくことになるのです。皆が疲弊するパターンです。

 

そのため切羽詰まる前に方向性だけは定めておく必要があります。タイの成熟度合いと共に報告体制の確立は必要になるものと認識し、携わる人すべてが苦にならないような「合意形成」を行うことが重要です。

※正直、辞められてしまってからの採用・教育コストが、これからの時代において、著しく高額になることは明らかです。

 

そのため、海外子会社管理を外部に頼るとしても、成果物の中に、どれだけ業務工数が減るのか(楽になるか)などの指標を入れることを依頼すれば良いのです。元々これだけ時間がかかっていたものを、皆の貢献によって、これだけの時間に工数削減できた。その成果は、当該海外子会社管理PJに関わっていた皆の成果だとすると良いのです。業務は楽になって、自身の評価があがることを求めない人はいません。

※中堅企業の内部統制業務はその業務設計をフレキシブルにしなければなりません。厳密な3点セット作成などどの会社も求めていないですし、改善につながりません。

 

皆様の会社では、現地managerが独自に作成している資料を日本側の経理が入手して、それを役員の報告用に組み替えるなどの業務を行っていませんか?

 

業務フローの構築はコミュニケーションの問題であり、「海外子会社管理」は、冒頭で述べた通り、まさにコミュニケーション業務です。タイ子会社の現地managerとタイ語にて、日本親会社の役員とは日本語にて、それぞれの考えのバックボーンも含めて意見を交換することができれば。JGAの「海外子会社管理業務」はそのような思いに応えるために、最適な提案を致します。

 

また、日本にもJGA税理士法人があり、日本とタイの両面から貴社の想いを形にすることが可能です。どのようなことを行うかの細かな業務外観の説明も日本・タイ問わずに無料で行えますので、お気軽にお問い合わせください。

 

※海外子会社管理業務は、日本とタイと協力して行っており、当該コラムについても弊社タイ法人のWebサイトにもアップしております。

 

JGA税理士法人

代表社員/税理士 片瀬 陽平

税理士業界が変遷する中、国際ビジネスのみが残された最後の領域であると考え、税理士法人時代から国際ビジネスに長く携わる。国際ビジネスには2種類(日本側・現地側が)あり、現地ビジネスに関しては、現地に駐在しなければクライアントにベストプラクティスの提案ができないと考え、2013年にメキシコに渡り、現地会計コンサルティングファームの立ち上げを行う。渡墨後は、日系企業のメキシコ進出サポート及び現地日系企業への経営コンサルティング(事業計画/年度予算作成、内部統制・不正調査、各種DD、連結パッケージ作成など)を主に行っていた。2016年にはタイに渡り、Bridge Note (Thailand)Co.,Ltd.(現BM Accounting Co.,Ltd)を立上げ、次いでインドネシアのPT. Bridge Note Indonesiaの移転価格事業部を組成した。また、2018年にタイ移転価格税制協力会の発起人としてタイ移転価格税制サービスレベルの底上げを行う。専門領域は、経営コンサルティング、インバウンド支援、国際税務コンサルティング、社内DX化など多岐にわたる