皆様こんにちは、JGA税理士法人/税理士の片瀬と申します。今回のコラムは「海外税務調査で一番指摘されるもの~赤字事業年度の支払~」です。
以前執筆した「5分でわかる国外関連者に対する寄附金~税務調査で追徴されるケースが多すぎる~」や「調査での指摘の多い項目「国外関連者に対する寄附金」について」では、日本側での税務調査において細心の注意を払う項目(日本で最も指摘が多い項目)を書きましたが、今回は海外子会社における税務調査において多く指摘されている項目について執筆します。日本親会社側と海外子会社側で多く指摘されている項目をしっかりと把握して、グループ全体の税務プランニングを行うようにお願いいたします。
こちらも前回の上記記事同様、全部読むのに5分かかりません。ポイントだけを記憶してもらえればと思います。是非ご確認ください!
まず、海外においても赤字事業年度は法人所得税を支払いません。所得に対して税金が課される以上、この前提はどの国においても変わりません。では、「赤字事業年度における支払いがあったとしても指摘されることはないのでは?」という考えに至ることかと思います。
ココに注意です!安心していると、いきなり税務調査に入られます!
具体的には、「赤字⇒黒字」化を達成した事業年度において、「繰越欠損金」を全額消すために調査に入るということは海外あるあるなのです。
※繰越欠損金が残っていると、翌年度以降に利益が出ても繰越欠損金を充当できるため、税金の支払いはありませんが、これを0にすると翌年度から税金を徴収できるための指摘になります。
ポイント①:海外では「赤字⇒黒字」化の際に税務調査に入られ、繰越欠損金を全て消される。
基本的に日系海外子会社はその国の規定に則って、しっかりと申告を行っているため、法規の取り扱いの間違いによって指摘する(繰越欠損金を消す)ことは難しい。そのため日系企業は、一見すると、指摘されて繰越欠損金を全て消されるリスクは少なそうですが・・・
ポイント②:赤字事業年度の親会社への支払いは利益の移転(本来必要のないお金の流れ)とみなされる。
※そのため当該支払につき過年度を含めて全額否認⇒繰越欠損金が全て消えるというストーリー。
つまり「赤字というビジネスの異常性」をもって指摘を行ってくるのです。赤字事業年度は既に競争力がなくなっているため赤字になっているという考え方(親会社のサポートを行っても赤字になっているのであれば、そんなサポートは本来必要なかったという考え方)です。
そのため特にロイヤルティは注意です。海外のロイヤルティの考え方には、同業他社に比べて技術力やブランドによる超過利益(超過収益力)があるからこそ、親会社へのロイヤルティを認めるというものがありますが、、、これが赤字事業年度には超過収益力がなく、当該技術力やブランドは既に陳腐化して競争力がなくなったと指摘される可能性が高い実態があるのです。
また、役務提供についても、内容によっては子会社から親会社への利益の移転と指摘されて認められない可能性があります(テクニカルサポート、営業サポートなど)。つまり、海外あるあるですが、赤字事業年度(特に「赤字⇒黒字」の端境期)には、無形の取引に係る支払いは積極的に否認してくるのです。
親子間の取引は、(議決権のある)親会社が意思決定し、取引価格を決めることができます。そのため恣意的な価格を設定しているという指摘は、海外で非常に多い指摘となりますので、その旨ご注意いただければと思います。
下記を参考にして両国における最も多い指摘の対策としてもらえれば幸いです。
これが、現在指摘としては本当に多い。取引が始まってしまうと後戻りできなくなってしまうので、取引を始める前に検証することが重要です。ご確認の程、よろしくお願いします。