税金が多額になるケース~価格設定に注意!~

皆さんこんにちは。JGA税理士法人/税理士の片瀬です。今回のテーマは、「税金が多額になるケース~価格設定に注意!~」です。国際税務シリーズとして、以前投稿した下記のコラムにて、日本及び海外の税務調査で指摘が非常に多い項目(指摘件数が多い項目)を解説いたしました。

 

  1. 「調査での指摘の多い項目「国外関連者に対する寄附金」について」
  2. 5分でわかる国外関連者に対する寄附金~税務調査でのポイント~」
  3. 「海外税務調査で一番指摘されるもの~赤字事業年度の支払~」

 

今日は、国際取引において「税額が多額になるケース」を確認し、質×量の両面からの確認ができればと思っています。上記コラムにて前述した量の面(指摘が多い取引)を振り替えると以下のようにまとめられます。

 

【指摘が多い取引】

日本:国外関連者(海外子会社)に対する支援。対価性のない取引。

外国:赤字事業年度の親会社に対する支払。損金性のない取引。

ただ、これは1つ1つのトランザクションの否認となるために、そこまで金額が大きくなることはありません。換言すれば会社が存続できなくなるほどの追徴課税を言い渡されることがないのです。ただし、質の面(税額が多額になる取引)では、会社が存続できなくなるほどの追徴課税を言い渡されることもあり、注意が必要です。

 

【税額が多額になる取引】

日本/外国ともに:国外関連者間(親子間)の取引

どういうことかというと、親子間の取引は、株を保有している親会社が子会社との間の取引価格を自由に設定することができます。換言すれば親会社は国際間取引に係る利益を操作することができるのです。100円のものを200円で売れば親会社は利益計上できますし、はたまた50円で売れば損失を計上することだってできてしまうのです。

 

国際課税では、ここにメスが入ります。

 

ただし、基本的に日系企業はユニークな製品や商品、サービスを提供するため、市場価格があるような商製品の取引は少なく、上記の「100円のもの」の根拠となる数字が見いだせないことも多い現状があります。そのために何とか難を逃れている会社も多いのです。

 

その中で、今回のコラムでは、難を逃れられないパターン(税務調査において根拠となる数字を見いだせるパターン)を紹介します。多額の追徴をくらうのは、このパターンが非常に多いので、まずはこれから確認してください。

 

【具体的に多額の指摘となるケース】

国外関連者への取引価格:100

第三者への取引価格:200 

これです。同様のものを「株を保有する関係会社」と「株を保有しない第三者」において異なる価格を設けて販売している場合です。本来、価格は戦略的に決まるものですが、国外関連者との取引価格だけは戦略的に決めてしまうと「移転価格税制」により指摘されてしまいます。ここが落とし穴であり注意です。

 

つまり海外子会社において、日本親会社から200円で仕入れていたものにつき、税務当局から「その商品の正しい金額は100円です」と100円の仕入価格によって推計で課税されてしまうのです。

 

その商品を1億円ほど仕入れていた場合はどうでしょうか(200円⇒100円の場合)。

⇒半分の5,000万円の利益を調整されて、税金を課されてしまいます。

ビジネスの根幹である「取引価格」を調査において指摘されると、税額は否応なく高額になってしまいます。海外の税務当局はこれを指摘したい。そのため取引価格と取引内容は重点的にチェックされるのでくれぐれもご注意ください。

 

【ポイント】

税務調査による追徴税額の多寡はPLのどの部分に対する指摘かによって基本的には異なります。

 PL

売上高

仕入高

売上総利益

販売費・一般管理費

営業利益

営業外収益・費用

取引価格に対する指摘は、「売上高」「仕入高」に対する価格是正となり、金額が過大になります。PLに対してそれぞれどのような指摘がくる可能性があるかのイメージはとても重要です。