戦略メモシリーズ⑦~事業計画の策定(赤字企業)の壱~

皆様こんにちは、JGA税理士法人/税理士の片瀬です。今回のコラムは「戦略メモシリーズ⑦~事業計画の策定(赤字企業)の壱~」です。

 

戦略メモシリーズ①で、事業計画作成のポイントを次のようにお伝えいたしました。

 

【事業計画作成のポイント】

事業計画は、「長期」 ⇒ 「中期」 ⇒ 「短期」 の順番で作ることになる。

 

これはもちろん正しい。正しいのですが、「長期」の業務設計をするとなると、0ベースで作る必要があり非常に難しいという実態もあります。また、業容拡大のためには既存事業と新規事業をしっかりと分類する必要もあります(既存事業では積み重ねにどうしてもなってしまう)。

 

そして、重要なことに「そもそも赤字企業にはそぐわない」という致命的な問題も内包します。

※執筆にあたり赤字企業+黒字企業+新規事業+既存事業といろいろなパターンがあって画一的な事業計画の策定をお伝えすることは、かえって混乱を招く可能性があるなと思い、今回は赤字企業の事業計画に絞ってお伝えしています(そのためタイトルも「事業計画の策定(赤字企業)の壱」としています)。

 

新規事業を行うためにはお金と時間がかかります。中期事業計画の策定・実行により倒産に陥ってしまうなんてことにもなりかねません。ただし、このままでは「座して死を待つだけ」という状況に既になっているかもしれません。そんな場合には、何とかして新規事業投資、又は、既存事業改善を行わなければなりません。

 

そのため、事業計画を策定する前にいくらお金とリソースを使えるかを検討・把握することは、実は非常に重要です。あくまでもCFがショートしないように。CFさえショートしなければ会社は生き続けるのです。

 

赤字企業の社長はPLを見ながら・・・「黒字化するためには、この費用削って、この費用削って」とPLとにらめっこしてはなりません。赤字企業の社長が見るものはCF予定表(単年度CF予算)です。過去の指標のBS/PLやCF計算書を見ても将来資金がショートするタイミングは見えません。

 

【銀行借入(赤字企業の場合)】

①債務超過にならない着地(最低限の担保)

②新規事業でお金を借りる(目的の明確化)

 

当然に銀行借入はCFにプラスですが、返済はマイナスです。

 

中小の赤字企業では、多くの場合、借入は基本的にただの延命です。重要なことは、それをぐるぐる回せる(借入⇒返済⇒借入⇒返済)だけのストーリーを描くことができるか。そして、債務超過でほぼ詰みとなるので、そうならないように、このモラトリアム(借入をぐるぐる回している状態)にて既存事業を改善(営業CFをプラス化)できるかが勝負です。

 

【既存事業】

至上命題:営業CFをプラスで回す

 

ここで重要なのは営業CFがプラスで回っているか否かです。営業CFが「外的要因以外」でマイナスとなってしまっている場合、特に「債務超過に陥る可能性」がある場合には、長期「利益」計画の作成はできません。作ろうと思っているのであればストップです。まずは短期「CF」計画から作っていきましょう。

 

<営業CFマイナスの会社>

①CF予定表の作成(CF予算)

②実現可能性の高い単年度予算の作りこみ(利益予算)

※CF予算と利益予算をリンクさせていく

 

今までCF予定表を作成していなかった会社では、おそらく直接法ベースのCF予定表は作成できないと思います。簡易なCF予定表は、前期の間接法CF計算書をベースとして作成します。会計ソフトを利用している会社は間接法のCF計算書がソフトから取れるはずですので、それを利用してください。

 

少し長くなりそうなので、今回はここまで。次回は~事業計画の策定(赤字企業)の弐~として、間接法CF計算書からのCF予定表の作成に言及します。お楽しみに!

 

【次回予告】

 

戦略メモシリーズ⑧~事業計画の策定(赤字企業)の弐~

 

【まとめ】

戦略メモシリーズ①~事業計画作成~

戦略メモシリーズ②~経営者と従業員の役割~

戦略メモシリーズ③~KGIとKPI~

戦略メモシリーズ④~意義のある財務指標とは~

戦略メモシリーズ⑤~価値ドライバーとは~

戦略メモシリーズ⑥~価値ドライバーを従業員に落とし込め~

戦略メモシリーズ⑦~事業計画の策定(赤字企業)の壱~

戦略メモシリーズ⑧~事業計画の策定(赤字企業)の弐~

戦略メモシリーズ⑨~事業計画の策定(赤字企業)の参~

戦略メモシリーズ⑩~事業計画の策定(赤字企業)の四~