戦略メモシリーズ⑨~事業計画の策定(赤字企業)の参~

皆様こんにちは、JGA税理士法人/税理士の片瀬です。今回のコラムは「戦略メモシリーズ⑨~事業計画の策定(赤字企業)の参~」です。直接的な続きものですので、まだ~事業計画の策定(赤字企業)の壱・弐~を確認していない方は先にそちらをご確認ください。

 

戦略メモシリーズ⑦~事業計画の策定(赤字企業)の壱~

戦略メモシリーズ⑧~事業計画の策定(赤字企業)の弐~

 

前回までは「赤字企業+既存事業=営業CFのプラス化」を主にお伝えしました。ただ、多くの場合に赤字企業は銀行借入を行いCFがショートしないようにビジネスを行うはずです。ただ、赤字が続くと・・・

 

今回のコラムでは、「赤字企業+新規事業=銀行借入のツール※ここの表現は前回と同様なので、体系理解は前回のコラムにて」についてお伝えします。

 

まず銀行借入の際に銀行担当者と話す内容について考えてみましょう。

  1. 試算表
  2. 資金繰表
  3. 単年度予算
  4. 事業計画

※ふつう(下記でいう既存事業でお金を借りる場合)は①と②の提出くらい

※②の資金繰り表について、前回コラムによるCF予定表は「間接法」で作成したものですが、基本的な銀行資金繰り表フォーマットは「直接法」により作成することになります。京都銀行のフォーマットを参考としますが⇒どの銀行もこの感じです。

 

VCから資金を引っ張ってくることと違い銀行の担当者は保守的です。成功することではなく、失敗しないことを重視するためその前提で話すことが必要です。もっと言ってしまうと、VCからの調達はPLで行いますが、銀行からの借入はBSで行います。ベンチャーの社長には、VC調達の経験がある方が多いですが、いざ銀行と話す際もVCと話すように話してしまうので、そのあたりは注意です。

※ベンチャー社長からすると全く楽しくないようです。VC担当者とは話しなれている(話していて楽しい)けれども、銀行担当者とは話たくないという社長もちらほら。

 

前提の部分ですが・・・

そもそも「赤字企業+新規事業=銀行借入ツール」という内容には違和感があると思います。銀行担当者は保守的です。そのため“+新規事業”ではなく、“+既存事業”の方が本来は資金調達を行いやすい。優良企業が一時的な資金の融通のため、調達を行う場合には、既存事業で説明すれば問題なく調達できるでしょう。

 

ただし、今回は一時的ではなく、経常的な資金不足(経常的な赤字企業)の場合にどのように資金調達を行うかを検討しているため、“+既存事業”ではなく、“+新規事業”なのです。もはや既存事業で運転資金をたっぷり借りて、それでもなお、赤字から抜け出せない会社をターゲットに書いています。

 

このような会社は、ともすれば債務超過に陥っている場合もあるかと思います。(会社の担保力である)BSを重視する銀行との交渉は、(新規事業で調達をするとしても)債務超過ではかなり難しくなってしまうので、期中から常に着地は意識してBSの数字を作ることが必要です。

 

また、債務超過にならなかったとしても、銀行との交渉を決算書・試算表を提出するだけで満足してはいけません。あたりまえですが、経常的な赤字企業に対し、銀行からの積極的な提案はありませんし、放置される可能性すらあります(赤字企業かつ債務超過ギリギリ=実力がないとされてしまう)。しっかりと実力を認識してもらいましょう。ここでは、資金がショートしないというのも前提条件のため、資金繰り表の提出も差別化要因とはなりません。このような場合に必要なことは、

 

「定量的な事業計画・予算」+「実現可能性の説明(変動要因の説明)」

 

これを説明するのですが、既存事業の計画だと少し弱いのです。なぜなら既存事業でそれだけの黒字が出るのであれば、ここまで赤字に陥っていない(進行期までで解消できている)ので。そのため既存事業では最も大切な実現可能性に疑義が入ってしまい借入を行えないことが往々にして起こるのです。

※コロナなどで一時的な赤字であると言えるのであればこの範疇ではありません⇒この場合には、既存事業のV字回復でのストーリー化。

 

実現可能性がキーワードと分かったところで、今回のコラムはここまで。次回は「定量的な実現可能性をどのように高めるか?」と「資金用途を明確にして、あくまでも新規事業の一時的な資金需要であることを説明する」というポイントを掘り下げます。

 

【次回予告】

戦略メモシリーズ⑩~事業計画の策定(赤字企業)の四~ ※経常的赤字企業の新規事業による調達の掘り下げ

 

【まとめ】

戦略メモシリーズ①~事業計画作成~

戦略メモシリーズ②~経営者と従業員の役割~

戦略メモシリーズ③~KGIとKPI~

戦略メモシリーズ④~意義のある財務指標とは~

戦略メモシリーズ⑤~価値ドライバーとは~

戦略メモシリーズ⑥~価値ドライバーを従業員に落とし込め~

戦略メモシリーズ⑦~事業計画の策定(赤字企業)の壱~

戦略メモシリーズ⑧~事業計画の策定(赤字企業)の弐~

戦略メモシリーズ⑨~事業計画の策定(赤字企業)の参~

戦略メモシリーズ⑩~事業計画の策定(赤字企業)の四~