皆様こんにちは、JGA税理士法人/税理士の片瀬です。今回のコラムは「戦略メモシリーズ④~意義のある財務指標とは~」です。
税理士の業務に財務分析というものがあります。今後、既存の税理士が行っている財務分析の多くはシステムにとってかわります。それはなぜでしょうか?
例えば自己資本比率が30%の会社があったとします。とある税理士は「財務安全性を考えて自己資本比率を50%まで高めていきましょう」と言うでしょう。はたまた他の税理士は「この超低金利時代において拡大期の御社はレバレッジをかけるべき、自己資本比率は気にせずに借入を行って売上成長を目指しましょう」と言うかもしれません。正解のないものを正解っぽくいう税理士が世の中に溢れているように(個人的に)感じます。
では、どうするのか?
まず社長が自らなりたい理想像を考えるところから始めてください。その上で、理想像に近い上場企業をピックアップしてください。そして自分たちが現在作っている財務分析と同様のフォームで理想となる会社の財務指標を集めてください。
【意義のある財務指標】
比較可能性がある財務指標
※規模が違うことをどこまで比較可能性分析に組み込めるかが課題(中小企業の決算数字が日本ではほとんど取れない)
理想とする会社の財務指標が自分たちのベンチマークになる財務指標です。会社の考え方によって財務指標は柔軟に動きます。まさに千差万別。なぜ自己資本比率30%⇒50%が正しいと言えるのでしょうか。もちろん上場企業のベンチマークも意味があるとは言えないかもしれません。大切なことは、「比較可能性を高めていくこと」なので、この部分を常に意識することが必要です。税理士がいう根拠なき50%よりも「なりたい会社」の指標の方が比較可能性が高いということです。
次に、前回お話ししたKGIとKPIをこの財務分析の考え方とリンクさせていきます。
<戦略メモ①>
財務分析 →理想会社との比較 →自社の強み・弱みを理解 →価値ドライバーに分解 →KPI該当性の検討 →KPI設定※ ⇔KPIと KGIの相関分析 ⇔KGIの設定・確認 (経営者目線)
KPI設定※別ルートへ分岐※ ↳行動計画の策定 (事業部長目線)
<戦略メモ②>
・KGI/経営指標は、独立ではその有効性を発揮することができない。
・KGI/経営指標を、その指標を構成する価値ドライバーに展開して具体的な社員の行動と関連付ける必要がある。つまり、KGIをブレイクダウンし、各期予算を達成するための具体的なKPIを設定することが必要。
理想会社との比較分析を行うと自分たちの強みと弱みが浮き彫りになってきます。中小企業の社内リソースは限られているので、強みを伸ばすか、弱みを改善するか、選択が迫られることでしょう。この部分の選択は経営者にしかできません。これが財務分析を基にする意思決定の最初の部分です。求められることは「戦略的意思決定」。意思決定のストーリーを銀行(をはじめとする外部)に説明できるようにしておくことが重要です。
さて、次回は「価値ドライバー」について説明しようと思います。初めて聞く単語かと思います。「従業員の行動⇔価値ドライバー⇔財務指標」、そして多くの場合には、財務指標ではなくこの「価値ドライバー」こそがKPIとなるのです。
【次回予告】
戦略メモシリーズ⑤~価値ドライバーとは~
お楽しみに!
【まとめ】