戦略メモシリーズ⑧~事業計画の策定(赤字企業)の弐~

皆様こんにちは、JGA税理士法人/税理士の片瀬です。今回のコラムは「戦略メモシリーズ⑧~事業計画の策定(赤字企業)の弐~」です。前回からの続きですので、まだ前回の~事業計画の策定(赤字企業)の壱~を確認していない方は先にそちらをご確認ください。

 

前回の結論として、赤字企業(営業CFマイナス)の場合に作成すべきものはCF予定表とお伝えしました。今回はそこから更に突っ込んで確認してみようと思います。

 

<営業CFマイナスの会社>※前回記載※

①CF予定表の作成

②実現可能性の高い単年度予算の作りこみ

今までCF予定表を作成していなかった会社では、おそらく直接法ベースのCF予定表は作成できないと思います。簡易なCF予定表は、前期の間接法CF計算書をベースとして作成します。会計ソフトを利用している会社は間接法のCF計算書がソフトから取れるはずですので、それを利用してください。

 

<ポイント>

間接法CF計算書を利用する

 

あくまでもCFがショートしないためにCF予定表を作り、それをベースとした単年度予算を作成することから始めます。間接法は最終利益から始まるCF計算書なので、実は積上型の予算を作成するために非常に優れているのです(黒字企業は逆算方式、赤字企業は積上方式。更に言えば赤字企業でも目的によって逆算方式か積上方式か異なります。明確な目的のない赤字企業(戦略的な赤字でない場合)は積上方式がマッチします)。

 

間接法CF計算書を各月ごとに横に並べCF予定表の外観を作成します、そして当該予定表の期首残高に当期の期末CFの残高をセット(つまり来期予定表の期首と当期末の数字が連動するようにセット)するのです。

 

また、営業CFの項目にある「営業債権・債務」の調整は時期の入り繰りなので、滞留がない場合には、その部分を大きくカットしても良いです(外観をつかむことが重要)。そして外的要因による臨時的な営業CFの調整項目を記載していくのです。必要なことは、営業CFに利益の調整項目をしっかりと記載して、もし今期と同様のビジネスを行った場合の来期のCFの着地を把握することです。

 

文章ではどうしても分かりづらいので、営業CFの調整項目について少し解説します。

 

例えば、補助金収入は近年非常に多いその他収入項目ですが、来年も同様の収入が見込めますか?見込めないのであれば、CFのマイナス要因として調整しなければなりませんし、債務超過にならないように売上を前取りした場合には、その原価部分は来期のCFのマイナス要因となりえるため調整します。人件費やその他固定費も変動予定があれば、それもまた営業CFの調整対象となります。

 

この場合の「調整した営業CFの着地」は当期と同じようにビジネスを行った場合の将来の自分たちです。これが許容できる数値になっているか。この数値で会計予算を作った場合に銀行が認めてくれるか。債務超過にならないか。

【ポイント】

①営業CF ⇒今回はここの説明に注力しています。

②投資CF

③財務CF ⇒営業CF予算と利益予算で借入説明資料のベースを作り、新規事業計画を基に借入を行うイメージ

 

もし、許容できない場合には、業務の再設計を行わなければなりません。

販売業:売上設計⇒コスト設計

製造業:原価設計⇒売上設計

※順番にも優先度がある

 

売上設計とは、新規ビジネス(イノベーション)を行うことではありません。既存業務での追加受注(インプルーブメント)を狙うイメージです。また、既存事業の「部門管理」を行って、案件数と利益率をしっかりと把握し、受注できるサービス(商品)と受注すべきサービス(商品)を網羅的にピックアップするのです。

 

コスト設計では、従業員の工数管理を行います。簡易でも良いので案件ごとに原価計算を行ってコスト倒れにならないか、待ち時間(従業員の遊休時間)が長期に及んでないかなどの検証を行います。コスト設計を見直すと、業務の合間合間の待ち時間が長時間化している場合が非常に多いですが、この隙間時間の埋め方なども重要です。

 

諦めずに、数字を基にした「選択と集中」を行い、業務を再設計してください。ポイントは数字を基にすること。経営者は業務の再設計において従業員への説明責任が求められますので、根拠のない説明は大きな反発を招きます。しっかりと伝えるための根拠を基に、ストーリーを作りこんで説明を行う必要があります。誰に伝えるべきか、いつ伝えるべきか、どう伝えるべきか(5W1H)も重要な部分ですので、気になる方は個別に聞いてもらえればと思います。

 

【パターン】

赤字企業+既存事業=営業CFのプラス化(PPMの「負け犬」にならないための延命)

赤字企業+新規事業=銀行借入のツール(PPMの「問題児」の組成)

黒字企業+既存事業=利益率の最大化(PPMの「キャッシュ・カウ」への移行)

黒字企業+新規事業=シェアの拡大(PPMの「スター」への移行)

※PPM=プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント=自社ビジネスのポジショニングは非常に重要

 

いろいろなパターンによって作成する事業計画と目的が異なります。自分たちにあった事業計画を作成することが何よりも重要です。逆算方式の事業計画は黒字企業に整合するものです。赤字企業はCFの改善が至上命題として捉えていただければと思います。

 

【次回予告】

戦略メモシリーズ⑨~事業計画の策定(赤字企業)の参~ ※赤字企業の新規事業組成の考え方の巻※

 

【まとめ】

戦略メモシリーズ①~事業計画作成~

戦略メモシリーズ②~経営者と従業員の役割~

戦略メモシリーズ③~KGIとKPI~

戦略メモシリーズ④~意義のある財務指標とは~

戦略メモシリーズ⑤~価値ドライバーとは~

戦略メモシリーズ⑥~価値ドライバーを従業員に落とし込め~

戦略メモシリーズ⑦~事業計画の策定(赤字企業)の壱~

戦略メモシリーズ⑧~事業計画の策定(赤字企業)の弐~

戦略メモシリーズ⑨~事業計画の策定(赤字企業)の参~

戦略メモシリーズ⑩~事業計画の策定(赤字企業)の四~